砂糖を摂るとむしろ低血糖になる!?の不思議
砂糖のような比較的単純な糖質は、自然界にあっても食物繊維やミネラルなど、他の成分と一緒に存在します。そのため腸からの吸収速度は穏やかです。
しかし私たちが日常口にする砂糖は、工業的に精製し純度を上げたもの。この状態の砂糖は、人間の体が想定していた吸収速度を凌ぎ、急速に血管に入り鋭い血糖値のピークを作ります。これを食後急峻(きゅうしゅん)高血糖と呼び、血管の内壁に大きなダメージを与えます。
血糖値とはだいたい平時は95mg/dlくらいで安定しており、食後は1時間くらいかけて145mg/dlくらいまで上昇します。すると膵臓からインスリンが出て、その命令で筋肉や脂肪細胞に糖分が取り込まれます。結果として血糖値はまた元に戻る、学校ではそう教えます。ただしこれは昔ながらの食事を摂った場合で、精製された糖質が多い現代食ではこうなりません。
まず食後急峻高血糖になりますが、あまりに急すぎてインスリンが間に合わないことがあります。つまり糖尿病でもないのに、血糖値が145mg/dlをはるかに超えてしまう人がいます。
またあまりに急に血糖値が上がったので、膵臓が勢い余ってインスリンを大量に放出してしまうことがあります。こうなると血糖値は60mg/dlくらいまで急降下してしまいます。つまりマイナス側のピークもできるということです。すなわち砂糖を摂ると低血糖になるという、一見矛盾した現象が起きます。
実は体は血糖値の低下を生命危機と判断し、自前でブドウ糖を合成します。体はそういう仕組みを何通りか持っているのですが、緊急時に登場するのが、ご存じアドレナリンです。アドレナリンは古代から命をかけて敵と戦ったり逃げたりするときに、体の多くの機能をストップさせてまでして急いで血糖値を上げるための、緊急事態用ホルモンです。
そのおかげで低血糖は回避できるのですが、今度はそのアドレナリンも出過ぎてまた高血糖に、そしてまたインスリンが…を延々と繰り返します。
このときインスリンが出ながらアドレナリンも出ているという、アクセルを踏みながらブレーキもかけているような状態のときもあるそうです。ですから数値上低血糖にならないことも多いのですが、このとき脳は正常な思考が難しくなっていると予想されます。
この状態でさらに砂糖を摂ると、この乱高下は夜になっても収束しません。しかし食生活の問診をすると、そういう人が多いのです。