賃貸経営者にとって、離婚時の所有不動産対策は非常に重要です。万が一賃貸アパートが前妻の子と後妻の子の共有になってしまった場合、将来的なトラブルの火種にもなりかねません。今回は、オーナーが「前妻や前妻との子どもには財産を遺したくない」と考えた場合の法的仕組みと対策方法について、不動産と相続を専門に取り扱う山村暢彦弁護士が解説します。
後妻の子だけに不動産を残したいなら「遺言書作成」を
現状の相続法制では、「遺留分」という制度により相続人にまったく渡さないということはできません。
しかし、前述の賃貸アパート経営や共有問題を解消する対策としては「遺言書作成」が唯一できる対策ではないかと思います。
2019年の相続法改正により、遺留分は金銭的な効力しかもたず、物件の権利関係へ影響をおよぼすことがなくなりました。そのため、前妻の子と後妻の子が不動産の共有状態に陥るようであれば、生前に遺言書を作成し、後妻の子単独に相続させるようにしておきましょう。
それでも遺留分を請求される事態には陥りかねませんが、遺言書をのこしていれば遺留分のみを金銭で清算すればよいことになります。
共有状態の場合にはどちらか一方の意思のみで物件を売ることはできないものの、遺言書で単独相続にしておけば、相続した子が物件を売って解決するということが可能です。また、相続財産とは別に保険金等で金融資産を作っておけば、保険金で遺留分を清算し、解決することもできます。
そのほか遺言書以外の対策方法として考えられるとすれば、「生前贈与」です。会社の株式などにおいては、相続時「精算課税制度」と組み合わせて生前贈与が有効なケースはあります。しかし、単純な生前贈与では税金が多額に発生するケースもありうるため、注意が必要です。
また、「不動産の資産保有会社を創設し、その株式を移転する」というスキームもないわけではないですが、その手間やコスト、税務対策を絡めて検討する必要がありますので、この点は、税理士や弁護士等の専門家と事前に相談して方針を決めていく必要があるでしょう。
このようなケースは実際に多くの相談事例がある
弊所でも多くの賃貸経営者から相続の相談を受けていますが、前妻と後妻が絡む場合にはトラブルが発生し、弁護士マターになりがちです。
関係性が希薄な状態で相続財産のやり取りをするのはどうしても難しいため、再婚を経験している方は、相続対策には特に留意したほうがよいでしょう。
山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦
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弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数7名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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