落ち込み激しい経済諸指標
コロナの再拡大による上海封城では特に消費が影響を受け、市の3月GDPの30%以上が失われるとの推計が出た(香港中文大学他)。実際、上海の第一四半期(Q1)の自動車ローンは120億元減、その他消費ローン213億元減で、3月末個人ローン残高は2.85兆元、年初比17.3%の大幅減となった(人民銀行上海本部)。
上海の人口は2021年2490万人(全国シェア1.8%)、GDP4.32兆元(同3.8%)。GDP規模は都市の中で最大で、上海だけでも中国経済全体への影響は大きいが、3、4月、全国で何らかの封城措置が採られた都市の合計人口は約4億人で全国の3割弱、GDP合計は4割を占めると言われている。
全国的にも、コロナ規制が緩和された5月以降、やや改善の兆しがみられるものの、3,4月を中心に諸指標が大幅に悪化。上期消費財小売販売額は前年同期比0.7%減(図表1)、中でも自動車販売額は5.7%減。工業生産は4月2.9%減、上期全体で3.9%増に止まった。景気先行指標の購買担当者経理指数(PMI)は4月に2020年3月以降最低の水準、5月以降は封鎖措置緩和を受けやや回復の兆しがみられる状況(図表2)。
不動産市場低迷が顕著で、住宅価格低下や不動産投資の減速がみられ(図表3、4)、上期不動産販売も金額28.9%減、面積22.2%減と大幅に落ち込んだ。若年層の就業事情が特に深刻で、国家統計局データで、16~24歳の失業率は4月18.2%、5月18.4%、6月19.2%と過去最高を更新。今後、過去最多となる新卒大学生1075万人が求職市場に加わり、状況がさらに悪化する恐れがある。大学生の7割超が今後2年間は厳しい就職事情が続くと予想しているという(人民大学就業研究所他)。
ただ、いわゆるZ世代(1995~2009年生まれ)は躺平(「寝そべって何もしない」ことを意味する近年の中国ネット流行語)の傾向が強く、それが皮肉にも悪化する就職事情のクッションの役割を果たしているという指摘もある。
0.4%の成長率は「政治的に設定された数値」との声
Q1全国成長率は前年同期比4.8%と大方の市場予想を上回ったが、もっぱら1、2月で稼いだもの。Q2は0.4%と減速し、上期全体では2.5%の伸びに止まった。国家統計局はQ2成長率が「圧力に耐え(頂住)プラス成長を実現した」と強調しているが、中国ネット上では、
①同局が発表した上海、吉林、北京の成長率がいずれも▼13.7%、▼4.5%、▼2.9%のマイナス成長
②上海を含む長江デルタや深圳と広州を含む珠江デルタ地域の経済も大きく落ち込んだこと
③財政部が発表した上期税収は前年同期比14.8%の大幅減だったこと
などを考えると、プラス成長というのは理解し難く、中国当局として動態清零政策堅持を主張している関係上、マイナス成長にはできなかったが、あまり高いプラス成長の数値にしても疑念を招くので、0.4%というわずかながらプラスという数値を政治的に設定したとする声がある。
欧米諸機関は5月末にかけ何度も通年成長率予測を大幅に下方修正し、大半が5%には届かないと予測。上期実績発表後、予測はさらに引き下げられており、2.7%(ソシエテジェネラル)、3.1%(バークレーズ)、4%(アジア開発銀行)などがある。
感染状況が再び大幅に悪化しなければ、財政金融政策の後押しで下期にかけ回復が予想されるものの、中国当局の年目標5.5%前後の達成は厳しい。一定の仮定の下に試算すると、年間5.5%成長を達成するために必要な下期の実質成長率は8%以上。
文化旅游部によると、五一假期の国内旅行者延べ人数は1.6億人(前年同期比30%減、コロナ前の67%)、観光収入646.8億元(同43%減、44%)、1日平均延べ旅客運送数2000万人(同62%減)、五一假期に開放されたA級旅游景区は8700強、全体の6割強に止まった。しかし、一般の人々から「隔離されてどこにも行けないのに、前年比30%しか減少していないというのはおかしい。自分のアパートの下にごみを捨てに行っただけでもカウントされているのではないか」と官側統計を疑問視する声が聞こえる。