理由①指導者の力量不足
応用力のない生徒には、学習の初期の段階で「覚えたら終わり」「これは試験に出る」という指導を受けている場合が少なくありません。理屈や理論とは無縁の指導の結果、基礎が身についていないのです。ここが躓きの場合は、プロの指導を仰ぐのが効果的です。その場合も、できれば大学入試レベルの指導ができる講師が望ましいです。学生講師やバイト感覚のプロ講師の多くが、「重要である」「試験に出る」レベルであり、せいぜい分類して終わりだからです。
理由②丸暗記でインプットしている
数学で「公式や定理は覚えているが、いざ問題となると解けない」ことがあります。表面的な理解にとどまっているため、その公式をどういう状況で用いるのか。何のために、その公式を使うのかが分かっていないためと考えられます。
参考書や問題集の多くは、公式の説明→例題→練習問題という順で成り立っているため、一見できているように感じてしまっているだけです。
どの公式を使うべきかが分かっているため、その形式の問題は解けますが、応用問題や入試問題になると手が止まってしまいます。改善策としては、分からなくなったら数学のプロに相談すべきです。どの部分の理解が浅いか、応用力をつけるためには、どの知識、発想がいるかを直接教えてもらうことをお勧めします。
理由③演習量が足りない
一つの単元を習得する時間配分は、「インプット3・アプトプット7」が一つの目安です。理解や知識に問題がなくてもアウトプットが少なければ、やがて忘れてしまいます。
習得するためには3冊の問題集を用意して繰り返すのが効果的です。最初の1冊は極めて簡単なものから始めてください。一目見て85%は正解ができそうな問題集がお勧めです。文字が大きく、ページが薄いものであればなお良いでしょう。その1冊を3周してください。1ヵ月程度で終わる予定で計画を立てましょう。仕上げは高速復習です。1ページ20秒を目安に何度も繰り返して目を通します。たいていの問題集であれば、1冊1時間程度です。30分程度で見直せるようになれば完了です。
2冊目も80%で正解できそうな問題集を選び、1冊目と同じ方法で学習を進めましょう。1冊目と同じく、仕上げは高速復習を行い、30分程度でおさらいできるようになればいよいよ最後の3冊目です。3冊目もこれまでと同様の問題集を選び、演習を進めます。ただし、
3冊目を始める前には、1冊目と2冊目を高速復習してから始めてください。3冊目までくると、基礎レベルの知識は瞬時に想起できる段階です。基礎を完璧にするとは、基礎レベルの問題が瞬時に解答できるレベルのことです。
理由④我流による悪い癖がついている
私の父は将棋の段位を持っているので、息子に将棋を教えてくれと頼んだことがあります。瞬時にNOと言われました。その時の言葉を今も覚えています。
「彼に将棋の才能があると思うのであれば、素人の私ではなくお金をかけてでもプロに教えてもらいなさい」と。「素人が教えれば、かえって子どもの才能をつぶしてしまう。遊びで将棋を指すのは、いくらでもするが、将棋の指導は一切しない」。
残念ながら、子どもの将棋への興味もそれほどではなかったので、プロの指導を仰ぐことはありませんでしたが、父から教えてもらったこの教訓は、今でも私の中では生きています。
レベルの高い大学ほど「基礎力」を重視
英文法で頻出のhad better Vは「…したほうが良い」と学習します。しかしながら、実際はhad betterは命令文に近く強い調子の言葉です。また「昨日、乗る電車を間違えてしまった」の英訳なら、単に「間違えた」の意味ですからI got on a wrong train yesterday.が答えになります。これをI have got on a wrong train yesterday.と書いたら、即座に「おかしい」と気づかなければなりません。
というのもyesterdayという過去の一時点を表す単語は、現在完了形の文では使えないからです。現在完了形の文では過去に関する表現として、継続用法ではforやsinceなど、経験用法ではonce、before、everなど、完了用法ではjust、alreadyなどが使用されます。このような基礎のルールをよく理解していたら、自分の答えが間違っていることに、この時点で自分で気づけるはずなのです。
そして、丸暗記や我流では知的好奇心を刺激できないことも大きな欠点です。英語では未来を表す表現にwillやbe going toや進行形を用います。英語に興味のある生徒であれば、その違いが気になるものです。「覚えたら終わり」で終わりにするのと、それぞれの違いを知るのでは、目先の得点は同じでも成長の仕方が違います。
難関大学の入試問題ではこうした学習の穴を実にうまく突いてくるのです。レベルの高い大学ほど、基礎をきちんと身につけているのかをさりげなく聞いてきます。
乾 俊和
株式会社ドゥクエスト 代表取締役社長
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