老後のために資産形成といわれても、思うように貯蓄が進まない……そこで充てになるのは退職金。しかしそれで老後の生活への不安はなくなるものでしょうか。みていきましょう。
平均退職金2,000万円だが…「一生、仕事を辞められない」大卒サラリーマンの悲惨 (写真はイメージです/PIXTA)

貯蓄がなくても「退職金で一発逆転」とはいかない

老後を心配する理由として、注目は「退職一時金が十分でないから」。思うように資産形成が進められなくても「退職金で一発逆転」と目論んでいる人は多いでしょう。しかし「退職金だけでは足りない……」というのが現実のようです。

 

厚生労働省『平成30年就労条件調査』によると、定年退職者の退職給付額は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で平均1,983万円、高校卒(管理・事務・技術職)で1,618万円でした。また退職金額がピークだと言われている1997年と比較すると、1,000万円近く減少となっています。

 

20年で1,000万円の減少ですから、自身が定年を迎えたとき、いったいいくらの退職金が手にできるのか……とても「退職金で一発逆転」という人生は見込めそうもありません。

 

それであれば、年金生活が始まる前に十分な蓄えを、と考えますが、前出のとおり、いつでも「十分なお金がない」というのが昨今の日本人。気持ちよく定年で仕事を辞めるということはできないようです。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、元・会社員の平均年金受給額は月額14万6,145円。前出のように「老後のひと月当たり最低予想生活費」が平均月35万円ということを考えると、夫婦ともに会社員で平均的な年金受給額だったとしても、月に6万円、年に72万円の赤字。仮に定年後30年の老後生活があるとすると、2160万円の蓄えが必要となる計算です。

 

あくまでも数値上のものなので、一人ひとり必要な老後資金は異なります。しかしお金に余裕があっても国があてにならない以上、「老後の生活」に不安を覚えるのは仕方がないことだと言えます。

 

2021年、改正「高年齢者雇用安定法」によって、「70歳までの就業確保」の努力義務が始まりました。年を重ねても安心して働き続けられる環境が整いつつあります。そのうち、75歳まで、いや80歳まで……と一生涯、安心して働き続ける世の中になるでしょうか。老後の不安払拭のためには、働き続けて安心を得るしかない……今の日本には、そんな選択肢しかないのかもしれません。