(画像はイメージです/PIXTA)

中国経済の中心地である上海は、6月1日午前0時から新型コロナウイルス対策の規制を緩和し、約2ヵ月間継続されたロックダウンは実質解除となった。「ゼロ・コロナ」政策と、経済成長の両立に苦しんだ中国市場の現在を、香港在住・国際金融ストラテジストである長谷川健一氏が徹底解説する。

上海市政府はロックダウン解除と追加経済政策を発表

続く5月25日には、李克強首相が中国全土の地方政府代表者とのビデオ会議を開催した。同会議では、上記の追加経済対策の周知に加えて、「ゼロ・コロナ」政策と経済成長のバランスをうまく取って政策を推進するよう求めたという。

 

またその席上では、中国経済はパンデミックの影響を大きく受けた2020年3月の状況よりも悪化しているとの見解が示されたという。これを受ける形で、上海市政府は5月30日に、新型コロナウイルス感染対策として実施している防疫と事業再開の管理に関する指針を改定し、生産などの「不合理な制限」を解除することを発表した。6月から、全ての製造業者が生産を再開することを認めたのである。

 

また、上海市政府は、経済を立て直すための政策も合わせて発表した。発表された措置は、8分野の計50項目にのぼった。国務院の主導した経済政策推進の動きに呼応したものであるといえよう。

 

中国経済の2022年のGDP成長率については、このところ下方修正が相次いでいる。スタンダードチャータード銀行が、年率5.0%としていた予想を同4.1%に引き下げていた。UBSは、予想成長率を前回の前年比4.2%から同3.0%に引き下げた。

 

中国経済は今年第3四半期と第4四半期には回復する可能性が高いとしつつも、「ゼロ・コロナ」政策が足を引っ張り、第二四半期のGDP成長率は前年同期比1.4%増、前期比では年率8.0%減に落ち込むとの、厳しい予見をしている。

 

JPモルガンも成長率予想を前年比4.3%から同3.7%に下方修正したと発表した。今後は、政策の効果と新型コロナウイルスの感染再拡大を見極めることとなるが、事態が好転するかどうかがあるのかどうかは予断を許さない。

 

今年の中国経済の成長率が年率4%を切るような事態は、世界経済にも日本経済にも相当
な影響をもたらすだろう。

 

折しも、米国では、米FRBが金利を引き上げすぎて景気の腰を折ってしまう「オーバーキル」を懸念する声は出ているが、中国経済のダウンサイドリスクへの織り込み度合いはまだそれほどでもない。リスクファクターとして考えておかなければならないだろう。

 

日本経済にとっても、中国経済の成長率が予想よりも年率数%低下してしまうという事態は、まだ十分に織り込まれていないのではないか。また、部品供給という生産面でも、厳しい行動制限下で、生産が間に合わず、欠品が発生するなどの影響は今後出てくることが考えられる。

 

昨年の電力不足で、中国製の部品生産不足が発生した折に、日本でも工場を止めざるを得なくなり、減産に追い込まれた事態は記憶に新しいところである。こうした問題は、タイムラグを伴って影響してくることに注意したい。

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