2021年9月、中国では電力不足の問題が顕在化した。2022年春には正常化宣言が行われたものの、依然として工場の生産停止や限電が続く省区もあり、サプライチェーン全体への影響も深刻である。背景に潜む問題のひとつとして、石炭需給への懸念がある。状況を読み解いていく。

李克強首相の「電力供給の約束」により、小康状態に

2021年10月以降、やや小康状態になった背景には、李克強首相が状況の深刻な地域を回り電力供給を約束し、以下のような政策が採られたことがある。

 

①発改委が10月、電力供給価格弾力化通知を発表。市場取引価格変動幅を上10%、下15%以内から上下20%以内に拡大し、エネルギー多消費企業は上限なしとした。その後価格は上昇傾向(図表2)。

 

②発改委は休止中の石炭採掘場を再稼働させ、発電所への供給増を指示。2021年通年生産は40.7億トン、前年比4.7%増まで回復。発改委によると、採掘増は全て規則に則っており、「CO2排出量を2030年ピーク(碳達峰)、60年までにカーボンニュートラル(碳中和)を達成する」という双碳目標への影響はない。

 

③2021年後半石炭輸入が増加に転じ、通年3.23億トン、前年比6.6%増とプラス伸びに。中国の石炭輸入構造は2020年に大きく変化し、オーストラリア(豪)のシェアが同年初32%から12月ゼロとなる一方、ロシアが増加。2021年はこの傾向が強まり、インドネシア、ロシア、モンゴル3ヵ国からの輸入が8割強、その他、米国、カナダ、南アなどが増加(図表3)。

 

(出所)中国海関統計他
[図表3]中国の国別石炭輸入(万トン) (出所)中国海関統計他

強まる石炭価格への介入

発改委は2021年10月以降、石炭価格が「合理的水準」からはずれている(脱軌)とし、11月末に開いた専門家との座談会では、「市場需給を真に反映した合理的水準に石炭価格を誘導する長期的枠組み」「石炭価格と電力価格が連動する枠組み」の構築を提言。また2022年3月末、価格指数提供業者15社を調査した結果を公表。多くの「重大または明らかな規則違反」があったとし、関連指数の公表を暫定停止。その他、以下のような介入を強める動きがある。

 

①2021年来の石炭価格上昇を受け、発改委は不当に高い(虚高)価格設定をしている石炭企業への改善指導(約談)を強め、改善がない場合はさらに厳格に責任を追及するとした。

 

②2022年2月末、発改委は「石炭市場価格形成メカニズムをさらに改善する通知」を発出。石炭価格を合理的水準に維持すること、石炭価格と電力買取価格(上網電価)、電力小売価格(用戸電価)の3つの価格連動を「2つの明確な実現」と位置付け、石炭価格の乱高下と、長年の難題として存在してきた電力価格との角の突き合わせ(煤電頂牛)を解消するとして、監督をさらに強化する姿勢を打ち出した。通知では石炭価格のベンチマーク(渤海港口のトン当たり中長期石炭交易価格)の合理的水準は、合理的流通・生産コスト、山西、陝西、内蒙古の3大石炭生産地域の出荷価格を考慮して現状570〜770元と明記。ただ、「当局が直接価格を決める体制への逆戻り」との反発を予想してか、「合理区間は決して一旦決められると変わらない(一成不変)というものではない」「価格が合理的範囲内にある限り市場機能が発揮される」と、過去の統制価格に戻るものではないことを強調。

 

次回最終回では、電力不足に関係する非経済的要因、ロシアのウクライナ侵攻とエネルギーについて記述する。

 

 

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