高齢になると、医療費や介護費がかさみがちです。しかし、これらの費用には所得に応じた上限があり、一定以上の負担が生じないようにする制度があることをご存じでしょうか。安藤なつ氏(メイプル超合金)、介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(KADOKAWA)より、損しないために知っておきたい軽減制度を解説します。
「1年間の医療費+介護費」を軽減する制度
安藤さん「医療費も介護費も所得に応じて1ヵ月の上限額があることがわかって安心しましたが、高齢になると両方とも利用することが増えますよね。」
太田先生「そうですね。介護度が高くなると、毎月の介護保険サービス利用料は当然高くなります。医療費も持病の悪化や転倒で入院する人が増えるなど、高齢者の方は費用がかさみやすい要素がたくさんあります。」
安藤さん「1ヵ月の費用は高額療養費や高額介護サービス費の上限を超えなくても、1年を通して通院することが多かったり、介護保険サービスを利用し続けていると、合計したらまとまった金額になりますね。」
太田先生「そんなときのために、1年間の医療費と介護保険サービス利用料の合計が一定額を超えるとお金が戻ってくる制度もあるんですよ。」
安藤さん「詳しく教えてください!」
太田先生「『高額介護合算療養費』という制度で、毎年8月1日から翌年7月31日までの医療保険と介護保険の自己負担分を医療保険上の世帯単位で合算し、所得に応じた上限額を超えるとお金が戻ってくる仕組みです。
たとえば、図表5の例で見ると父親と母親の1年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計は64万円で、所得区分は一般なので上限は56万円ですから(図表6)、8万円戻ってくるのです。」
安藤さん「すべての領収書を保存しておいて、合計しなくちゃいけないんですね。う~ん、親にはハードルが高そうな作業です。」
太田先生「心配しなくても大丈夫です。高額介護サービス費と同じように、対象となる人には自治体から『支給申請書』が郵送されてきますから、必要事項を記入して返送すればいいのです。ただし、計算期間中に引っ越しをした場合は送付されませんから、自分で計算して申請するか、自治体の保険年金課などへ問い合わせをしてみるといいですよ。」
安藤さん「申請書が郵送されるなら安心ですね。」
太田先生「ところが、そうともいえません。高齢になると役所からの郵便物は面倒なものと思うのか、封も開けずに放置している親が大勢います。実家へ帰ったら郵便物のチェックをするというのも、子どもが習慣にしたほうがいいでしょう。」
メイプル超合金・安藤 なつ
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
1981年1月31日生まれ、東京都出身。2012年に相方カズレーザーと「メイプル超合金」を結成。ツッコミ担当。
2015年M-1グランプリ決勝進出後、バラエティを中心に女優としても活躍中。介護職に携わっていた年数はボランティアも含めると約20年。
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を持つ。厚生労働省の補助事業『GO!GO!KAI-GOプロジェクト』の副団長。
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連載安藤なつ(メイプル超合金)が聞いてきた! 弱った親と自分を守る「お金とおトクなサービス」超入門
介護・暮らしジャーナリスト
京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに、「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」などの視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)資格を持つ。「Yahoo!ニュースエキスパート」のオーサーなどでも活躍中。
1996~2023年の27年間、遠距離介護の子世代をサポートするNPO法人「パオッコ」を運営。2012年、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了(社会デザイン学修士)。主な著書に、『高齢者施設お金・選び方・入居の流れがわかる本第3版』『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(いずれも翔泳社)、『親の介護で自滅しない選択』(日経BP)、『知っトク介護弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門第2版』(共著、KADOKAWA)などがある。
●太田差惠子のワークライフバランス
https://www.ota-saeko.com/
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