●政府は26日に「物価高対策」を決定、原油高などに対処し経済社会活動の確実な回復を目指す。
●事業規模は13.2兆円だが、実質的な追加支出は2.7兆円程度で、弊社の想定に沿った内容に。
●株価押し上げには政策に中長期的な目線が必要、第2段階の対策でそれを確認できるかに注目。
政府は26日に「物価高対策」を決定、原油高などに対処し経済社会活動の確実な回復を目指す
政府は4月26日に関係閣僚会議を開き、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を決定しました。同対策は、①原油高対策、②エネルギー・原材料・食料などの安定供給、③原材料高の影響を受ける中小企業支援、④生活困窮者支援、の4つを主な柱としています。物価高騰に機動的に対処し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確実にすることが、今回の目的です。
具体策として、①には、石油元売り会社への補助金拡充、漁業・農林業など業種別の支援、②には、省エネルギーの促進、原材料・食料の調達支援、などの施策が盛り込まれました(図表1)。また、③には、中小企業に対する賃上げ促進税制や、政府系金融機関による資金繰り支援強化などが明記され、④では、低所得世帯に子供一人あたり5万円が給付されることになります。
事業規模は13.2兆円だが、実質的な追加支出は2.7兆円程度で、弊社の想定に沿った内容に
今回の緊急対策について、事業規模は13.2兆円となっており、このうち国費が6.2兆円を占めています(図表2)。6.2兆円の国費の内訳は、予備費が1.5兆円、補正予算が2.7兆円です。残りの2兆円は、2022年度の当初予算において、すでに支出が決まっている金額とみられます。また、1.5兆円の予備費は、一般予備費から0.4兆円、新型コロナウイルス感染症対策予備費から1.1兆円が使用されます。
そのため、実質的な追加支出は2.7兆円となり、緊急対策の規模は、みかけほど大きくありません。そのため、GDPの押し上げ効果は、+0.1%ポイント程度にとどまると推測されます。弊社は、2022年度の日本の実質GDP成長率について、4月15日時点で前年度比+2.1%と予想していますが、今回の「物価高対策」の規模と経済効果は、事前の想定に沿ったものでした。
株価押し上げには政策に中長期的な目線が必要、第2段階の対策でそれを確認できるかに注目
このように、物価高への緊急対策は、実質的な規模が小さく、また、内容的にも当座をしのぐための施策が多いため、日本株への影響は限定とみられます。市場の観点からすると、政府の対策には、原油などの資源価格の上昇を「所与の条件」として、その影響を和らげようとする「短期的な目線」ではなく、資源価格の変動に影響を受けにくい経済構造へ転換していくための「中長期的な目線」が必要と思われます。
この点は、日本株の方向性に大きな影響力を持つ海外投資家の関心を高めるためにも、重要と考えます。なお、岸田文雄首相は、経済対策を2段階で行うとしています。第1段階は今回の「物価高対策」で、第2段階は参院選の公約を盛り込み、まとまった規模になる見通しです。次の第2段階では、日本経済の構造転換や潜在成長率向上に向けた、力強い施策と明確な青写真が示されるかが注目されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「物価高対策」のポイントと株価押し上げに必要な要素について【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト