●中国のロックダウン拡大への警戒から、26日の米国株は大幅安、ナスダックは年初来安値を更新。
●中国政府はゼロコロナ政策維持のため、感染者数が急増した場合、ロックダウン拡大も想定される。
●主要株価指数は中国リスクを織り込み調整中だが、この先、中国の感染動向改善なら急反発も。
中国のロックダウン拡大への警戒から、26日の米国株は大幅安、ナスダックは年初来安値を更新
4月26日の米国株式市場で、ダウ工業株30種平均は大幅反落となり、前日比809ドル28セント(2.4%)安の33,240ドル18セントで取引を終えました。S&P500種株価指数は前日比2.8%安の4,175.20ポイントと、3月8日につけた年初来安値(4,170.70ポイント)に迫り、ナスダック総合株価指数は前日比4.0%安の12,490.74ポイントと、こちらは3月14日につけた年初来安値(12,581.22ポイント)を更新しました。
このところ、米国では、急激な金融引き締めで景気が冷え込むとの懸念が、株価の上値を抑える一因となっていました。昨日はこれに加え、中国の都市封鎖(ロックダウン)が上海市に続き北京市にも及ぶとの警戒が強まり、主要株価指数は大きく値を崩す展開となりました。実際にロックダウン拡大となれば、中国景気が低迷し、世界経済や金融市場の波乱要因となる恐れがあります。
中国政府はゼロコロナ政策維持のため、感染者数が急増した場合、ロックダウン拡大も想定される
改めて中国の現状を確認すると、上海市では3月28日に東部からロックダウンが始まりましたが、約1ヵ月経過した現在も、全面解除は依然見通せない状況です。4月16日には江蘇省蘇州市と陝西省西安市で移動制限が始まり、北京市では4月25日から新型コロナウイルスの感染対策が大幅に強化され、市の中心部に位置する朝陽区において、住民や区内への通勤者全員を対象としたPCR検査が開始されました。
中国政府は原則として、感染者を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策を維持しており、今後、移動制限や感染対策の強化でも、感染者数が急増した場合は、ロックダウンの対象地域が広がることも想定されます。中国の都市別GDPのランキングは図表1の通りで、上海市、北京市、広東省深圳市、広東省広州市、重慶市がトップ5に並び、前述の江蘇省蘇州市は第6位となっています。
主要株価指数は中国リスクを織り込み調整中だが、この先、中国の感染動向改善なら急反発も
これらの地域にロックダウンが広がれば、中国の景気悪化や供給網(サプライチェーン)の混乱が予想され、世界的な景気減速と企業業績への影響が強く懸念されます。主要国の株式市場では、このようなリスクを早々に織り込む動きが強まっています。当事国である中国の上海総合指数は、ここ数日で下げ足を速め(図表2)、日経平均株価も本日は大幅安となり、午前の取引で節目の26,000円に接近する場面もみられました。
日本では今週から3月期決算企業の決算発表が本格化していますが、各社が今年度の業績予想における中国リスクについて、どのような見解を示すのか、市場の注目が一層集まると思われます。なお、各国の株式市場は、中国の感染動向について、ある程度、悪いシナリオを織り込み始めており、短期的には軟調な動きが予想されます。ただ、今後、中国の感染動向に改善の兆しがみられれば、株価は急反発する展開もまた十分考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「中国リスク」への警戒を強める株式市場【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト