スムーズな相続には遺言書が必要
身寄りのないいとこの遺産相続をスムーズに進めるためには、生前にいとこに遺言書を書いてもらうことをおすすめします。
遺言書ですべての財産を遺贈することを定めておけば、相続財産管理人による手続きは不要になります。相続財産管理人による手続きではいとこが特別縁故者として認められず遺産がもらえない場合もありますが、遺言書で遺贈を定めておくとその心配もありません。
包括遺贈で遺産の記載もれを防ぐ
遺産相続をスムーズに進めるためには、遺言書で遺産の記載漏れがないようにしなければなりません。遺言書に記載されていない遺産があれば、その遺産について相続財産管理人による手続きが必要になります。
遺言書で遺産を与える方法には、どの遺産を誰に与えるかを指定する特定遺贈のほか、与える遺産の割合を定める包括遺贈があります。包括遺贈であれば遺産の記載もれの心配はありません。複数の人に遺産を与える場合は、割合があわせて100%になるように指定します。
特定遺贈を定めた遺言の例:「下記の土地を〇田〇男(住所△△△)に遺贈する」
包括遺贈を定めた遺言の例:「遺産の2分の1を〇山〇子(住所△△△)に遺贈する」
遺言執行者を決めておく
身寄りがいない場合は、遺言書を書いてもそれを誰が実行するかということが問題になります。遺言書を書くときは、遺言執行者を誰にするかを記載しておきましょう。弁護士、司法書士、行政書士など専門家に依頼するほか、遺贈するいとこでも構いません。遺贈で遺産をもらう立場であっても遺言執行者になることはできます。
公証役場で作成する公正証書遺言が確実
遺言書の形式には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言はいつでも自分で書くことができますが、形式の不備で無効になったり偽造されたりする恐れがあります。公正証書遺言は公証役場で公証人に作成してもらうため記
載内容の不備で無効になることはありませんが、公証人への報酬が必要になります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所は下の図で示すとおりです。手間と費用はかかりますが公正証書遺言の方が確実です。
ただし、民法の改正で自筆証書遺言についても法務局で保管してもらえる制度が新設され、自筆証書遺言も確実性は向上する見込みです。
いとこの遺産をもらった場合は相続税が2割増
いとこは法律上の相続人ではありませんが、特別縁故者としてあるいは遺贈でいとこの遺産をもらった場合は相続税を申告しなければなりません。
相続税は遺産の額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に課税され、基礎控除額を超える部分の遺産を法定相続分で分けて税額を計算します。
相続人がいないいとこの遺産相続では法定相続人は0人として数えるため、遺産のうち3,000万円を超える部分に相続税が課税されます。税額の計算では遺産を法定相続分で分けず、3,000万円を超える部分に税率をかけて税額を求めます。遺産をもらった人が複数いる場合は、その税額を人数で分けます。
なお、配偶者と1親等の血族以外の人が遺産を受け取った場合は、相続税の税額が2割加算されることになっています。いとこはこの条件に当てはまるため相続税が2割加算されます。
他に相続人や受遺者、特別縁故者がいるかどうかで計算方法が変わってきますので、相続税が発生する場合、詳しいことは税理士に相談しましょう。
いとこの遺産を相続したい・させたい場合は専門家へ
身寄りのないいとこが亡くなった場合は、通常は遺産を相続することができません。特別縁故者として申し出れば遺産をもらうことができますが、手続きには時間と費用がかかり、特別縁故者として認められない可能性もあります。
特別縁故者として認められたい場合は、まずは相続に詳しい司法書士などの専門家に相談してみましょうまた、いとこに自分の財産を相続させたい、という場合は、遺言書を書くことをおすすめします。
その際、法的に有効な遺言を遺したい場合や、法定相続人がいて揉める可能性がある時には司法書士に相談して効力のある遺言書を作成した方が良いでしょう。