世界に動揺が広がる中で開催された、中国の「両会」
中国では3月4〜11日、毎年恒例の全国人民代表大会(全人代)と政治協商(政協)会議が開催された。中国では通常、2つの会議という意味で両会と呼ばれている。政協会議は立法機能や重要な意思決定権限のない諮問機関で、全人代以上に「ゴム印(橡皮図章)を押すだけ」の機関と揶揄されている。
例年同様、もっぱら焦点が当たったのは全人代、特にそこで国務院(政府に相当)を代表して李克強首相がおこなった政府活動(工作)報告(以下、「報告」)だが、本年は秋に指導層の交代を議論する5年に一度の党大会(第20回、20大)が予定されており、さらに中国内でコロナ感染再拡大の兆しが見え始め、ロシアのウクライナ侵攻で国際社会が大きく揺れる中での開催だっただけに、両会を巡る様々な動きに一段と注意を払う必要がある。
成長率目標を中心に内外で多くの関連報道があるが、主として中国内外の中国語媒体を通じ、日本では必ずしも注目されていない事象を点検する。
成長率目標は低いのか、野心的か?
報告で2022年成長率目標は5.5%前後と発表された。過去数十年で最低の目標水準だが(図表1)、市場の大方の事前予想は5%程度だったことからも明らかなように、この目標でも達成は容易でないとの指摘も多い。
報告案を作成した事務方の国務院研究室は吹風会※1で、過去2年間の平均成長率5.1%と、現行第14次5カ年計画(規画)※2の実行を考慮したもので、成長率が生み出すGDP規模では5年前の7.4%、10年前の10.5%成長、世界11〜12位の経済体規模に匹敵し(実質成長率5.5%、消費者物価上昇率見込み3%から名目成長率8.5%程度を前提にしたものと思われる)、決して低い目標ではないと説明。
※1 正式の記者会見ではない非公式の記者ブリーフィング。
※2 数値目標はなく、「潜在成長力を充分発揮することを推進。経済運行は合理区間を維持」との定性的記述のみ。
李氏は全人代後記者会見で登山に喩え、「山が高くなるほど、さらに上に登ることは容易でなくなる」と厳しい認識を示した。
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