(※写真はイメージです/PIXTA)

年々深刻化する地球環境。私たちがすべき第一歩は「知ること」かもしれません。今回はゾウの密猟と日本の関係について考えていきます。

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    アフリカゾウの密猟と象牙の違法取引

     

    アフリカゾウ(ここでは、サバンナゾウLoxodonta africanaとマルミミゾウLoxodonta cyclotis両種をさす)は、サハラ砂漠以南のアフリカ37ヵ国に生息し、大陸全体の個体数は2016年時点でおよそ42万頭と推定されています。

     

    アフリカ南部の個体群は比較的安定していると考えられていますが、アフリカ全土では、1970年代から80年代および、2006年以降に横行した密猟により、1979年時点の推定個体数134 万頭と比較して、37年間でおよそ31%減少しました。

     

    アフリカゾウの密猟の主な要因は、高値で取引される象牙に対する需要です。

     

    象牙の国際取引はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)により原則禁止されていますが、2000年代に入ってからのアジアの経済成長に伴う、富の象徴としての需要や、消費の急速な拡大により、違法な取引が急増。アフリカでの密猟をも引き起こし、アフリカゾウの生存に深刻な脅威をもたらしています。

     

    やまない密猟と違法取引を阻止するために、国際的な取り組みが進む中、2016年のワシントン条約第17回締約国会議(CoP17)で、大きな転換点となる改正決議が採択されました。

    これは「ゾウの密猟や、象牙の違法取引に寄与している国内市場については、閉鎖(つまり国内の商業取引の停止)を求める」という内容の勧告で、条約の公式文書「決議10.10:ゾウの標本の取引」の中に新たに追加されることになったのです。

     

    写真:WWF/Folke Wulf
    (C)WWF / Folke Wulf

    日本と象牙の関係…国際社会の認識

     

    この国際的な枠組みにおける決議は、各国での政策へも反映されはじめ、象牙市場のあるアジアの消費国を中心に、象牙取引に関する法規制の導入が進みました。

     

    象牙の市場規模の大きな国・地域(中国、香港、台湾)は、各国内・域内での取引禁止のための法改正を実施。象牙製品が頻出するアンティーク市場の活発な欧州(EU、イギリス)でも、原則国・域内取引禁止の法律・措置が成立しました。

     

    こうした動きが加速する中、日本政府は、現在アフリカで起きている密猟や違法輸入には寄与していない、との見解の下、今も象牙の国内取引を続ける姿勢を堅持しています。

     

    ですが、ワシントン条約の下運用されている象牙の違法取引の分析(ETIS:Elephant Trade Information System)を元にしたTRAFFICの報告によれば、2011年〜2016年の間に、2.42トンの象牙が日本から違法に「輸出」されたことが示されています。

     

    さらに、USAID(米国国際開発庁)による2020年のアジア地域での象牙の押収事例に関する報告書も、中国が関わる象牙の違法取引において、日本から持ち出された象牙が関係している事例が最多であったことに言及。

     

    日本の象牙の国内市場が、世界の象牙の違法取引に関係していることが明らかになっています。この日本で継続される象牙の国内取引と、日本の市場から流出を続ける象牙の違法取引が世界から注目される中、2019年のワシントン条約第18回締約国会議(CoP18)では、密猟や違法取引に寄与しないために実施している措置について締約国に報告するよう求める決定が採択されました。

     

    そして、2022年11月に開催が予定されている、第19回締約国会議(CoP19)を前に、2022年3月7日~11日にかけて開催されたワシントン条約の第74回常設委員会(SC74:74th meeting of the Standing Committee)の中で、各国が行なった実施措置についての審議が行なわれました。

    次ページワシントン条約第74回常設委員会の結果

    ※本記事は公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の発表資料を一部抜粋・編集したものです。

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