※画像はイメージです/PIXTA

「父が亡くなってしばらくしてから愛人を名乗る女性が現れた!」というケースは、現実にも起こっています。そうなると相続の現場は大混乱です。そんな不測の事態で、どのように対処すればいいのか解説していきます。なおこの記事では、一方あるいは双方に戸籍上の配偶者がいて、互いに婚姻の意思がない交際関係にある人を「愛人」と呼ぶことにします。

認知していれば愛人の子は遺産を相続できる

遺産相続が一段落した頃に、愛人ではなく愛人とのあいだに生まれた子、いわゆる隠し子(婚外子)が現れるケースもあります。相続のために戸籍を調べると隠し子が見つかったというケースもあります。

 

愛人に相続権はありませんが、愛人とのあいだに生まれた子には相続権があり、遺産を相続することができます。ただし、故人がその子を認知していたことが条件です。

 

故人に認知されている愛人の子は法定相続人であり、戸籍上の配偶者とのあいだに生まれた子と同等の割合で遺産を相続できます。

 

[図表]認知していれば愛人の子は遺産を相続できる
[図表]認知していれば愛人の子は遺産を相続できる

 

愛人の子だからといって遺産分割協議から除外することはできず、その子も含めて遺産分割の話し合いをしなければなりません。

 

話し合いの結果、愛人の子が相続放棄をする可能性もないわけではありませんが、妻や実子が愛人の子に相続放棄するよう強要することはできません。

 

<愛人の子の認知は死後に行われることもある>

子の認知は父親と子の関係を確定する手続きです。愛人の子については、生前に認知することをためらって遺言認知される傾向があります。また、認知をしないまま死亡したことで、愛人の子または母親である愛人が死後認知を訴えることもあります。

 

遺言認知をするには、遺言書に子を認知する旨、母親の名前、子の住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍筆頭者を記載します。

 

認知の手続きは遺言で定められた遺言執行者が行います。遺言執行者が定められていない場合は、相続人が家庭裁判所で遺言執行者の選任手続きをしなければなりません。

 

死後認知をするには、父親の死後3年以内に子(未成年者の場合は母親)が検察官を相手に死後認知請求の訴えを起こします。訴える相手が検察官になるのは、本来相手となるべき父親が死亡しているからです。死後認知の裁判では、DNA鑑定を用いて親子関係が立証されます。

 

死後認知では認知されるまでに数ヵ月から数年かかることもあります。認知されるまでに遺産分割が終わってしまった場合は、認知された子は他の相続人に対して金銭の支払いを求めることになります。

 

愛人や愛人の子がいると相続トラブルに繋がりやすい

戸籍上の配偶者とは異なり、愛人には遺産相続が認められません。遺言や死因贈与契約があれば愛人に遺産が渡ってしまいますが、遺留分減殺請求で一部を取り戻すことができます。また、遺言の無効を訴えることもできます。

 

一方、認知された愛人の子には、戸籍上の妻との子と同等の相続権があります。愛人の子を遺産分割協議から除外することはできず、話し合いによって解決することが必要です。

 

遺産相続のときに愛人や愛人の子が現れた場合は、相続トラブルに発展することが多くなります。調停まで進むと更に自力での解決は難しくなります。できるだけ早く遺産相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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