1995年のEUを皮切りに、世界中で急速に施行が進む個人情報保護関連の法規制。デジタル化とデータ利用の発展により、個人情報保護に関する要求はさらに高まると予想されます。現段階で、日本国内ではどのような規制がされているのか。情報マネジメントシステム構築のエキスパートが、具体的に解説します。

2021年、個人情報保護法改正でルールはさらに厳密化

2015年の個人情報保護法の改正では、「要配慮個人情報」という定義も新たに設けられました。「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」と定義され、これについては他の個人情報とは異なり、本人の同意なく取得することが原則として禁止されたのです。

 

ほかにも「利用する必要がなくなったときは、個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないこと」や「個人情報取扱事業者がオプトアウト方式(あらかじめ本人に対して個人データを第三者提供することについて通知または認識し得る状態にしておき、本人が反対をしない限り同意したものとみなす方式)で第三者に提供する場合には、個人情報保護委員会に届け出をすることを義務づける」、「個人情報を第三者提供または提供を受けた場合には記録を作成し、一定期間保存する」といったことが新たに定められ、全体を通してより厳格な個人情報の管理を求めることになりました。

 

さらに3年ごとに国際的な動向や情報通信技術の進展、新産業の発展の状況などをみながら見直していくという規定も設けられました。状況に応じて、まだまだ改正して強化していかなければならないという政府の姿勢を示したものです。

 

実際この改正法が完全施行となった2017年の3年後の2020年、そして翌年の2021年にもさらなる改正が行われました。

 

特に2021年の改正(施行:2022年4月)は、「個人情報保護法制定以来の抜本的改正」といわれています。

 

独特のハンコ文化や書面重視のビジネス慣習、生産性向上への希薄な意識、不統一でレガシー化したシステムの温存などを背景に、国際的にみて日本はデジタル化に大きく遅れを取ってしまったといわれています。国も危機意識を強め2021年に「デジタル社会形成整備法」が制定され、その後デジタル庁を新設するなどし、遅れの挽回に乗り出しました。その一環として個人情報保護法も見直されたのです。

 

従来は「個人情報保護法」「行政機関個人情報保護法」「独立行政法人等個人情報保護法」の3本の法律が併存していたのですが、これを「個人情報保護法」に一本化して全国共通の明確なルールとし、これらを「個人情報保護委員会」が所管することにしました。データ利用が活発になり、官民の区別をする意味がなくなったという認識に基づくものです。

 

一本化に伴い個人情報の定義の統一や収集や管理、利用に関するルールはさらに緻密化され、全体として強化されました。例えば本人の権利保護を強化して利用停止・消去などをしやすくし、個人データの授受があった場合の提供記録の開示請求権の強化、不適正利用の禁止、法令違反に対するペナルティの強化などが行われています。

 

ほかにも医療分野・学術分野における個人情報の取り扱いについて規制を統一するため、国公立の病院や大学などの学術研究機関にも民間と同様の規制を適用することや、学術研究分野では、EUで運用されているGDPR(General Date Protection Regulation:EU一般データ保護規則)に十分対応できるように従来の適用が除外されているものを見直すといったことも行われました。国際的にデータ活用がますます求められ、進行していくなかで、個人情報保護の動きはより活発化しているのです。

 

仲手川 啓

株式会社ユーピーエフ 代表取締役

 

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

Pマーク ISMSを取ろうと思ったら読む本

Pマーク ISMSを取ろうと思ったら読む本

仲手川 啓

幻冬舎メディアコンサルティング

経営者、情報管理担当者必読!Pマーク・ISMS取得の流れから注意点、コンサル会社の選び方まで徹底解説! 「低価格」「丸投げでお任せください」と謳い、とにかく受注だけすればよいというスタンスのコンサル会社が多く存在…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録