フジテレビは、満50歳以上・勤続10年以上の社員を対象に早期退職者募集。高給で知られているテレビ局だけあって、特別加算金は驚くほどの金額で、世間をざわつかせています。そもそも早期退職、将来の見通しがたたないと申し込めるものではないでしょう。退職金と貯蓄、合わせていくらあれば決断できるものなのか考えていきましょう
フジテレビ「早期退職者」に1億円だが…50歳でリタイアを決断する「勝ち組会社員」の実情 (※写真はイメージです/PIXTA)

早期優遇退職制度…いくらあれば申し込んでも安心か?

厚生労働省『平成30年就労条件総合調査』によると、早期優遇退職制度を利用した際の退職金は平均2,326万円。勤続年数が35年を上回ると平均2,500万円を超えます。

 

さらに企業規模別にみていくと、従業員1,000人以上企業よりも従業員300人以下、ある程度の規模の中企業のほうが、早期退職優遇の場合の退職金は平均値が高い結果になりました。

 

【勤続年数別「早期優遇退職者」の退職金】

勤続20~24年:1,402万円

勤続25~29年:1,995万円

勤続30~34年:2,522万円

勤続35年以上:2,530万円

 

【企業規模別「早期優遇退職者」の退職金】

従業員30~99人規模:861万円

従業員100~299人規模:2,521万円

従業員300~999人規模:2,090万円

従業員1,000人以上規模:2452万円

 

出所:厚生労働省『平成30年就労条件総合調査』より作成

 

総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)によると、世帯主50代前半世帯の「消費支出」は35万4,494円、50代後半で32万8,461円、60代前半で30万3,485円です。仮に50歳で早期優遇退職制度に申し込み、公的年金を受け取るまで約15年間あるとしましょう。単純計算、消費支出は5,918万円に達します。退職金+貯蓄で、この数字が見えてくれば、早期退職実現への第一関門はクリアとなります。

 

次に公的年金を得るようになってからの生活もみていきましょう。仮に65歳以降、夫婦ともに無職だとすると、月々の収入は23万6,576円、そのうち公的年金は21万5,603円。それに対して消費支出は22万4,436円で、毎月1万8,528円の赤字。夫婦で35年間生きたとしても、赤字額は780万円となります。

 

つまり単純計算で7,000万円近くの生活費を見通せたなら、50代で早期退職し、その後、働かなくても生きていけるということ。これだけの保障があれば、安心して早期退職優遇制度に申し込めるでしょう。

 

もちろん、ライフスタイルは人それぞれ。必要となる金額も、この通りというわけにはいきません。それでも、50歳で1億円の特別加算金。たとえ、その段階で貯蓄ゼロでも「安定した老後は約束されたもの」といえるでしょう。

 

今回のフジテレビの早期退職者のニュース。先行き厳しい業界の現状が問われるよりも、退職金そのものに羨望の眼差しが向けられています。