前回は、開業医の資産形成における7つの視点のうち、2つ目の「リタイア後の必要金額」の設定と、3つ目の「資産形成の期間」について説明しました。今回は、4つ目の「投資スタイル」について見ていきます。

複数の「インカムゲイン」を確保する

「④投資スタイル」の設定とは、ファイナンシャルゴール時点から将来の生活の原資を、預貯金などの資産を切り崩していくのか、それとも収益不動産の賃貸収入のような現金収入をメインにするのか・・・。その比率を決定することになります。投資スタイルについては、次の2つのパターンがあります。

 

●貯めて切り崩す(円外貨の預貯金、積立型養老保険など)

●作って受け取る(不動産賃貸収入、投信分配金、株式配当など)

 

リタイア後の生活費のために、数多くの開業医は「現金」や「預貯金」で貯め込む方法の資産形成を行っています。しかし、将来的に激しいインフレなどが発生した場合、資産が目減りしてしまう可能性があります。そのため、開業医としての事業収入に匹敵する「不労収入」を、不動産の賃貸収入や株式などによって得られる配当収入などによって確保することが大切になります。いわゆる複数の「インカムゲイン(資産収入)」によって確保しようというものです。

 

インカムゲインとは、保有している資産から定期的に入ってくる収入のこと。たとえば、預貯金や債券などから受け取れる利子や信託の収益分配金、そして株式投資の配当などです。収益不動産の賃貸収入もインカムゲインのひとつと言えます。

 

【図表1】投資スタイルについてのイメージ

理想的な比率はストック50%、インカムゲイン50%

資産運用をするにあたって、どんな金融商品をメインに運用すればいいのか、あるいはサブ的な商品として何を選択すればいいのか。そうした運用商品を選択することが投資スタイルの設定です。

 

そこで、現時点での将来の収入構造をシミュレーションしてみましょう。まずは、現在加入している国民年金などの公的年金、及びリタイア後の収入になりそうな資産収入を、分かる範囲で概算してみます(図表1)。

 

(ⅰ)公的年金(国民年金、厚生年金など)

(ⅱ)国民年金基金、確定拠出年金

(ⅲ)保険医年金、歯科医師国民年金基金、医師年金など

(ⅳ)生命保険(個人年金)

(ⅴ)資産収入

 

この総額が、現役時代の収入の6割程度に達していれば大丈夫ということになるわけです。ちなみに、(ⅰ)〜(ⅳ)までの収入で「ボリューム(目標額)」に達成してしまえば、(ⅴ)の資産収入は不要になってしまいますが、大半の人は難しいはずです。

 

そこで、キャッシュフローの不足額を割り出して、「インカムゲイン」で賄うことになりますが、その場合の将来の「ストック」と「インカムゲイン」の比率をシミュレーションしてみましょう。ストックというのは、これまでに蓄えた資産のことで預貯金や保険の積立を意味しますが、使う時は切り崩して使うことになります。一方のインカムゲインは、使う時に切り崩す必要はありません。

 

たとえば、貯めて切り崩す人資産の多い場合は、どうしても将来的に資金不足に陥る可能性が拭えません。ストックだけでは長生きした時に、ある程度資産が目減りしていく可能性を想定しなければいけませんし、ひょっとしたら急激なインフレなどによって、資産の急激な目減りがあるかもしれません。逆にインカムゲインが70%もあると、資産の額はほとんど減っていきません。

 

インカムゲイン中心のポートフォリオであれば、将来的に予期しないインフレなどがあったとしても、賃貸収入や配当も同時に増えていくことが予想され、大きな目減りには至らないでしょう。しかし、突発的な支出には心もとない感があります。そこで、ストック50%、インカムゲイン50%といった「投資スタイル」が理想となります。

 

【図表2】今後受取れる年金、退職金のイメージ

本連載は、2015年8月4日刊行の書籍『開業医のための資産形成術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医のための資産形成術

開業医のための資産形成術

恒吉 雅顕

幻冬舎メディアコンサルティング

かつて開業医は、勤務医より圧倒的に収入が多く、リタイア後の悠々自適な生活を保障されていたことから、将来安泰な職業だと言われていました。しかし今、税制改革による富裕層への増税や、2025年問題へ向けた医療制度改正によ…

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