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小学校教員採用試験…3年連続で最低倍率を更新
文部科学省が2020年度実施(2021年採用)の公立学校教員採用選考試験の実施状況を公表。小学校の競争率(採用倍率)は全国平均で2.6倍、前年比0.1ポイントの減少となりました。
また中学校の全国倍率は5.1倍、高等学校は6.1倍と、こちらも前年度から大きく倍率は減少しています。
【公立学校教員採用選考試験の採用倍率の推移】
2011年:4.5倍/7.8倍/7.7倍
2012年:4.4倍/7.7倍/7.3倍
2013年:4.3倍/7.5倍/7.7倍
2014年:4.1倍/7.4倍/7.2倍
2015年:3.9倍/7.2倍/7.2倍
2016年:3.6倍/7.1倍/7.0倍
2017年:3.5倍/7.4倍/7.1倍
2018年:3.2倍/6.8倍/7.7倍
2019年:2.8倍/5.7倍/6.9倍
2020年:2.7倍/5.1倍/6.1倍
出所:文部化科学省
※数値左より、小学校、中学校、高等学校の採用倍率
都道府県別に小学校の採用倍率をみていくと、最も高いのは「高知県」で7.1倍、最も低いのが「佐賀県」と「長崎県」で1.4倍となっています。
1位「高知県」7.1倍
2位「鳥取県」5.5倍
3位「兵庫県」5.2倍
4位「奈良県」5.0倍
5位「群馬県」4.3倍
5位「沖縄県」4.3倍
**********
39位「広島県」1.7倍
41位「富山県」1.6倍
41位「福岡県」1.6倍
43位「佐賀県」1.4倍
43位「長崎県」1.4倍
出所:文部化科学省
採用倍率の低下は、教員の質の維持のうえでも懸念とされていますが、文部科学省は、「大量採用時代の大量退職によって採用数が増加したことが倍率低下の大きな要因」だとしています。
教師不足が深刻化…授業ができない学校までも
一方で教育現場では、教師不足が問題になっています。昨年5月に文部科学省は、教師不足に関する実態調査を行い、このほど結果を公表しました。
それによると2021年5月1日、小中学校の教師不足人数は1,701人で不足率は0.28%、高等学校では159人、不足率0.10%だったといいます。
このような状況に対し、小学校では学級担任がいない状況を避けるため、本来担任ではない職務の教師が学級担任を代替するケースが474件ありました。また 当該教科の教師がいないことで授業を行えていない中学校が16校、高等学校で5校あったといいます(遅くても同年7月時点ではすべて解消)。
都道府県ごとに教師の不足率をみていきましょう。最も不足率が高いのが「島根県」で1.46%。「熊本県」「福島県」「鳥取県」「長崎県」と続きます。ちなみに「東京都」や「山形県」ほか、1都5県では不足率0%=教師不足なしでした。
【都道府県「教師不足率」ワースト10】
1位「島根県」1.46%
2位「熊本県」0.88%
3位「福島県」0.85%
4位「鳥取県」0.81%
5位「長崎県」0.78%
6位「福岡県」0.70%
7位「茨城県」0.64%
7位「千葉県」0.64%
9位「神奈川県」0.52%
10位「宮城県」0.45%
出所:文部化科学省『「教師不足」に関する実態調査』(令和4年1月公表)より
教師不足の要因としては、産休・育休取得者や特別支援学級数、病休者数が増加したことで、見込み数以上に必要教師数が増えたこととしています。
劣悪な労働環境…働き方改革が進まない、教育現場
教員採用試験の倍率低下、教師不足……。混乱する教育現場を物語っていますが、その要因で最も大きいのが、過酷な教師の労働環境にあるでしょう。
文部科学省による『教員勤務実態調査』(2016年)では、公立小学校で3割、中学校で6割の教師が過労死ラインである月80時間を超える時間外労働を行っていることが判明しました。このような状況で、教員養成大学に入学しながらも、教員の道に進まない学生が増えているといいます。
また教員の年齢構成もいびつで、定年退職を前にした50代の教師は多い一方で、その下の40代は極端に少なく、また20代~30代は多くなっています。多くの現場でベテランと若手をつなぐ中間層がおらず、本来40代が担う業務を、経験の浅い若手が担っています。「現場力」の低下は教育の質の低下にも繋がり、また労働時間の増大にも繋がっているのです。
教育現場でも働き方改革を進めるべく、公立学校の教員の勤務を年単位で調整する「変形労働制」の導入が進んでいます。これは多忙な時期の所定労働時間を延長し、代わりに授業がない期間の労働時間を短縮できるようにする、というもの。しかし現場からは「このような制度では何も変わらない」という声が相次いでいます。
教育は国の成長の原動力。低迷から脱却するためにも、教育の質の低下は大きな問題です。早急な改善が求められています。
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