2022年、「海外の名門校」が日本国内で開校ラッシュ
2022年は、まさに日本の国際教育のターニングポイントとなる年です。
英国最高峰のパブリックスクールであるハロウスクールがハロウインターナショナルスクール安比ジャパン(岩手県)を、ラグビースクールがラグビースクールジャパン(千葉県)を開校。つい先日、おなじくイギリスの名門マルバーンカレッジが東京にオープンするというニュースも入ってきました。
この3校のうち一番開校が早いハロウ安比校はすでに1期生の選考を開始しています。授業料と寮費で年間900万円、日本でもっとも高額にもかかわらず志願者が世界中から殺到したというから驚きです。キャンパス見学などのイベントでは、3歳以下の小さなお子さんを持つご家庭も多いとのこと。
世界ですでにインターナショナルスクールを運営するハロウが、白羽の矢を立てたのは日本の安比高原でした。スイスにも負けない恵まれた自然豊かな環境のなかで、夏を「グリーンシーズン」、冬を「ホワイトシーズン」と呼び、スキーやマウンテンバイクなどの多彩なプログラムを実現しています。英語・日本語はもちろん、中国語の学習カリキュラムもあり、選択すれば3ヵ国語を身につけることができるのも特筆すべきポイントです。
■「新設校」でも「海外名門校ならではのメリット」は得られるのか?
さて、ここでひとつ気になるのは、このような新設校で果たして海外の名門校に期待できるメリット、「OBネットワーク」を得ることは可能なのでしょうか?
世界各国のハロウインターナショナルで運営経験があり、ハロウインターナショナルスクール安比校では初代校長に就任したファーリー氏に実情を伺いました。
「ハロウOBの結束はきわめて固いです。卒業生はオールドハロヴィアンズ(OH)と呼ばれ、とても活発なネットワークを築いています。OB組織には年間を通してさまざまなアクティビティやイベントがあります。ネットワークはビジネスにも生きていますね。新設するハロウ安比校OBもメンバーとなりますから、ハロウ安比校に入学した生徒はそれをおおいに活用することができるでしょう。国際的なアッパー・ネットワークへの入り口が、この日本で開かれたのです」
OBネットワークはもちろん、蓄積された大学進学のノウハウなど、海外のボーディングスクールのメソッドと経験がハロウ安比校には結晶しているとファーリー氏は語ります。
ハロウの卒業生はハロヴィアンと呼ばれ、そのネットワークは国際ビジネス界でも抜群の存在感を放ちます。トレードマークとなっているライオンの校章がついたネクタイをして採用面接に行くと、ハロウネットワークの恩恵にあずかって話が弾む、といったエピソードも事欠きません。
伝統のなかで育まれたネットワークと、真のグローバルエリート教育のメソッド、そして日本の恵まれた環境が融合しているとなれば、世界的にみても相当に魅力的な学校となるのは間違いないでしょう。
これまでの東アジアにはない、大きな魅力を持つ学校です。数年後、富裕層のアジアにおける国際教育の潮流を変え、日本が要所になる可能性が見えてきたのです。
教育は財産であり、人生を切り開きます。だからこそ、大いなる投資が可能な人々は、世界中を見回し、真剣にその最適解を探します。
グローバル教育の最適解が、日本にある。そんな時代が、もしかして来るかもしれません。光明となりうる学校の日本進出は、結果的に日本全体のグローバル教育の底上げに一役買うことも違いないでしょう。
2022年のボーディングスクール開校ラッシュと、これからの「日本のグローバル教育戦闘力」にご期待ください。
佐野 倫子
教育コラムニスト、小説家
東京都生まれ。埼玉大学教育学部附属小学校、共立女子中学高等学校を経て早稲田大学教育学部英語英文科卒。イギリス国立ロンドン大学ロイヤルホロウェイに留学。就職・教育関連雑誌の編集者やWEB制作ディレクターを経て、フリーランスへ。
講談社WEBマガジンmi-mollet、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]にて小説・受験コラムを多数執筆。2021年、多数の受験生保護者への取材と自身の経験をもとに小説『天現寺ウォーズ』を出版。