子連れ離婚「養育費を多くもらうために、収入を減らすべき?」事例をもとに弁護士が解説

子連れ離婚「養育費を多くもらうために、収入を減らすべき?」事例をもとに弁護士が解説
(※画像はイメージです/PIXTA)

子どもがいる夫婦が離婚する際、婚姻費用や子どもの養育費などを巡り、トラブルに発展するケースが少なくありません。本記事では、依頼者から寄せられた「養育費」に関する疑問について、家事裁判を得意としている水谷江利氏が解説していきます。

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養育費と収入UP、今の私はどっちを選べばいい?

【相談内容】
離婚後の生活を考えて、少しでも収入の良い仕事を探しています。しかし、養育費や婚姻費用を少しでも高くもらうためには、今の収入をできるだけ抑えた方が良いのでしょうか?

養育費や婚姻費用は、現在のお互いの収入額で決まる

今回のご相談は、お子さん連れで離婚・別居予定の女性からの相談です。

 

養育費や婚姻費用は今、現在のお互いの収入で決まり、受け取る方の収入が高ければ、それだけ受け取るお金は少なくなってしまいます。ですから、短期的な考えなら、収入調整を多少してもいいとは思います。

 

しかし、やりたい仕事やいい仕事が見つかりそうなとき、受け取る養育費のためにそのやりたい仕事を手離すか。もしくは、養育費ありきで働かないことを決め込むか。その答えは「NO」だと思います。それは、「仕事をセーブして得られる養育費の差額」<「自分が稼ぐことができる金額」になるからです。

 

自分の収入を抑えて受け取れる金額上昇分より、自分で稼げる金額の方が確実に多いはずです。仕事のチャンスが目の前にあるなら、そのチャンスを手離さない方がいいと、筆者は思います。

離婚すれば、以前と同じ生活は保証されなくなる

離婚するということは、当然、これまでと同じ生活が保証されるものではありません。実際問題、これまでと同じ水準の生活を見込んで、離婚できる方はとんどいません。

 

最高裁判所は2019年12月、養育費や婚姻費用を決める際に使う算定表の改定版を16年ぶりに発表しました。これまでよりはおおむね増額されてはいますが、これまでと同じ環境を元パートナーから提供してもらえることを前提として、離婚後の生活を組み立てようとすると、そうはいかないことがほとんど。

 

やはり「最後に頼れるのは自分なんだ!」と、決心してもらう必要があります。
 

 

ご相談に来られる方のなかには「自分で全部抱え込まなくちゃ」と気負っている方も、「これまでと同じ生活をさせてもらいたい」と覚悟不足な方もいらっしゃいます。

 

前者の方には「別れても子どもにとってはパパであることは変わらないので、頼れるものは頼りましょうね」といいますし、後者の方には「別れる以上は、これまでと同じ環境ではないですよ」とアドバイスします。

養育費の算定表で決まる金額だけで生活するのは難しい

悲しい現実ですが、現在の養育費の算定表で決まる金額では(ご主人の年収が相当高い金額の場合を除いては)どのみち、その金額だけで暮らすことはできません。離婚して子どもと暮らしていくためには、支出(住居費など)を減らすか、収入を増やすか。あるいはその両方が必要になります。

 

とはいえ、実家に帰ることができる方ばかりでもありません。そうなると、自分にできることは収入を増やすだけなのです。そうしないと自分も子どもも生活できません。

 

それなのに「養育費のために仕事をセーブする」と言うのは本末転倒だと思いませんか?

 

もちろん、お子さんが小さいとか、それぞれの事情がありセーブせざるを得ない時期はあると思いますが、仕事の方で良いチャンスがあるのならうまく調整しつつ、新しい人生のために、その話に乗らない手はありませんよ!

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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