通所サービスの利用は親子関係を悪化させる
男性にもごく少数、順応できる人はいるようですが、多くは慣れることができません。デイサービスではレクリエーションの時間があり、利用者同士が簡単なゲームをするのですが、幼児の遊びに近いものもあり「バカバカしくてやってらんねえ」と怒って、行かなくなる人もいるといいます。それでも仕事をもつ介護者は、デイサービスを利用してもらわなければ困るので、説得をくり返して行ってもらうのです。
このデイサービスより、さらにハードルが高くなるのがショートステイです。ショートステイは短期入所。宿泊込みのサービスです。介護をする人が仕事で泊まりがけの出張に行くとき、あるいは旅行に出かけるときなどに利用します。
いっぽう、介護される人にとっては、デイサービスなら日中だけだから我慢もできる。しかし、宿泊を含む長い時間、息子(娘)の都合で自分が施設に預けられるということは許せないわけです。
それでも心やさしい親なら「息子(娘)の仕事のためだから仕方がない」と思うかもしれません。しかし、その理由が旅行のためだと知れば、とても許容できなくなるのです。
その点、デイケアはリハビリによる機能回復という目的が加わるぶん、利用者の抵抗感は少ないといえます。いずれにしても、通所サービスは利用者と介護者のあいだに軋轢を生みがちなサービスであることを知っておいたほうがいいでしょう。
「でも、そこをなんとか乗り越えて、利用しなければいけないと思います」と語るのはケアマネの高橋さんです。
「利用者さんが通所サービスに抵抗感をもつ心理はわかります。でも、介護者がそれを気にしすぎると離職まで考えることになってしまう。仕事を辞めれば親御さんにつらい思いをさせなくて済むと思うわけです。しかし、先々のことを考えれば、離職は避けなければなりません。
ケアマネは利用者さんが通所サービスに行く、行かないでご家族ともめる場面に何度も遭遇しています。その経験上、抵抗感をできるだけ軽くし、行ってもらう説得法も身につけている。そうした方法を介護者に伝えるのもケアマネの務めだと思っています」
こうした利用者と介護者の気持ちをくみ取ったうえで、的確なアドバイスができるのが、頼りになるケアマネといえそうです。
相沢 光一
フリーライター