会社を設立する際には、会社形態を選ばなければなりません。本記事では、永田町司法書士事務所の代表で司法書士の加陽麻里布氏が、合同会社と株式会社の法律的な違いについて解説します。

会社運営の最重要事項…「意思決定」方法の違いとは?

会社設立の際にもっとも検討していただきたいのは、意思決定の場面に関することです。

 

複数人で会社を興したいとなったとき、株式会社の場合は意思決定は株主の持ち株比率、出資額の割合に応じて決定していきます。一方で合同会社の場合は人頭割りですので、出資額関係なく多数決で決定していきます。

 

たとえば、AさんBさんCさんがいるとした場合、株式会社ではAさんが10株、Bさんが30株、Cさんが60株を持っていたとすると、役員としてXさんを採用したいとAさんBさんが考えていたとしても、Cさんは株式の過半数をもっているので、Cさんが反対した場合はAさんBさんの意見というのは通らない、ということになります。

 

合同会社の場合は人頭割りですので、出資比率はAさんが10万円、Bさんが30万円、Cさんが60万円と、AさんBさんの出資比率が低くても、多数決で勝てればAさんBさんの意見が通るということになります。

 

■株式会社の意思決定

Aさんが10株、Bさんが30株、Cさんが60株所有

 

AさんとBさんの株式の数は40株、Cさん所有の株式は60株のため、AさんとBさんが協力してもCさんの意見を拒否できない。

 

■合同会社の意思決定

Aさんが10万円、Bさんが30万円、Cさんが60万円所有

 

人頭割のため、2人の合計よりも多く出資しているにもかかわらず、AさんとBさんが同じ意見だった時、Cさんは2人の意見を拒否できない。

 

この違いはとても重要です。特に、複数人で会社を興す、という場合は非常に慎重に検討したほうがいいでしょう。

 

合同会社の場合、2人で会社を始めたのに、2人の仲が悪くなってしまうと、なにも意思決定できなくなってしまいます。株式会社の場合は、持ち株比率を51対49などにしておけば、最終的には1人に従って意思決定ができるわけです。

 

このように、特に複数人で会社を興す場合、株式会社にするのか合同会社にするのかという点については、慎重に検討し、決定するべき事項だといえます。

日本でAmazonが合同会社を選択している理由とは?

次に公告義務についてです。株式会社の場合は、必ず決算公告を行なわなければいけません。これは、会社法で決算公告義務が定められているためです。

 

それに対して、合同会社には決算公告義務が存在しません。そのため、AmazonやGoogle、西友などの合同会社は決算公告をしておらず、会社の詳細な情報がわからないというようなこともあります。

 

いずれにしてもこの決算報告の義務があるかないかということはコストなどにも大きく影響するため、株式会社と合同会社の大きな違いだといえます。

 

そして最後は機関設計です。株式会社の場合は、柔軟な、裏を返せば複雑な機関設計を行うことができます。

 

取締役が3名以上いれば取締役会という組織を組成することができたり、監査役を置いて企業としてのガバナンスを高めていくといったことができたりします。

 

合同会社の場合はかなり簡易で、取締役会や、監査役会といった機関を置くことができません。

 

ただ、その会社で上場企業を目指すなど、大規模な会社にすることを考えていなければ、意思決定は迅速なほうがいいため、合同会社のシンプルな機関設計は好まれる傾向にあります。

 

先ほどお話しした通り、合同会社の意思決定は人頭割りです。そのため本当に早く物事を決めていきたいということであれば人頭割りのほうが迅速な意思決定ができます。

 

ですので、一緒に会社を興す方の意見、それから会社の規模感、会社を箱として利用するだけなのか、それともどんどん動かしていくのか、それらによってどちらを選ぶべきかの選択はまったく変わってきます。そのため、みなさんそれぞれの実情に合わせて検討していただくことが必要だと思います。

 

株式会社と合同会社、どちらにするか迷ったら?

ここまでお話しした通り、株式会社と合同会社は、法律面で大きく違うため、どちらにするかは本当に悩むところです。しかし、これをいってしまったら元も子もありませんが、私個人の意見を最後に述べさせていただくと、「迷ったら株式会社でいいのではないか」というのが結論です。

 

合同会社のほうがイニシャルコストは安いので、合同会社として会社を興したあと、売上が上がったら株式会社にしたいな、と思った場合は、もちろんあとから組織変更で合同会社から株式会社に変更はできます。

 

しかし、その場合は当然専門的な書類の作成が必須であり、専門家の力が必要になりますので、そのコストがかかってしまいます。

 

そのため、あとから変更できるから合同会社で、というような考えであれば、最初から株式会社のほうが結果的には安く済みますし、機能性も柔軟な機関設計ができますので、迷ったら株式会社にすることをお勧めします。

 

■動画でわかる、合同会社と株式会社の違い

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士

 

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