男性利用者が「行きたくなる」サービスとは
■「行かされる」から「行きたくなる」デイサービスへ
デイサービスをはじめとする通所サービスに行きたがらない利用者(とくに男性)が多いという話をしましたが、サービス事業者もそれを認識していて、課題を見直し、誰もが行きたくなる新たな要素を盛りこむ努力をしています。
とくにデイサービスは参入する事業者が多く、近年設立ラッシュがつづいています。団塊の世代が75歳を迎え、国民の4人に1人が後期高齢者になる2025年は目の前。ニーズが増えるいっぽうだからです。そのため、デイサービスはすでに過当競争状態にあり、さまざまなアイデアで利用者獲得にしのぎを削っているのです。
最近目立ってきているのは、男性利用者でも楽しめる工夫。不評を買っていた簡単なゲームではなく、麻雀や囲碁、将棋ができるところが増えています。麻雀は男性ならたいていの人がのめりこんだ経験がありますし、囲碁、将棋に目がない人も多い。しかも頭を使うから認知症予防にもなります。
「行きたくない」とゴネている利用者も「麻雀ができるみたいよ」といわれれば行ってみる気になるでしょう。そして、卓を囲んでいるときは時間があっというまに過ぎますから、長時間いても苦にならないですし、顔見知りもたくさんできる。囲碁、将棋も同様です。
自分が楽しむために行くのであれば、介護者の都合で「行かされる」のではない。説得する必要もなく、進んでデイサービスに行ってくれるわけです。
ほかにも、趣味を通じたサークル活動、新たなことを学ぶ活動などを取り入れている施設があります。趣味では陶芸、書道、俳句、絵手紙など、学習は英会話、パソコンなどです。また、カラオケやフィットネストレーニングができるところも珍しくなくなっています。
利用者にとって、これらを行なうことは、要介護になって落ちこんだところからの復活であり、新たなチャレンジでもある。気持ちを前向きにし、元気を取り戻すきっかけにもなります。介護をする人にとっても、利用者本人が楽しんでくれれば心置きなく仕事ができる。過当競争によって生まれた新たなタイプのデイサービスは、利用者・介護者とも喜ばせているのです。
デイサービスを利用する必要が生じたら、ケアマネに利用者の好きなことや趣味を伝えておくといいでしょう。条件に合った施設を探してくれるはずで、そうすれば、行く行かないで、もめることはありません。
相沢 光一
フリーライター