※画像はイメージです/PIXTA

近年、富裕層への課税が非常に重くなっています。資産を維持・移転するために様々な手段を講じてきた富裕層たちですが、選択肢は確実に狭まっているのです。本記事では、富裕層狙いの税制について解説するとともに、今後の資産防衛の手段について考察します。国際税務に強みを持つ古橋隆之税理士事務所の、矢部将生税理士の解説です。

富裕層が資産を防衛する「具体的な手法」とは?

上記でも述べた通り、外国不動産、とくに建物部分の減価償却費用の損金算入制限は税制改正により封じ込められた。しかし、償却の仕方により建物をひとまとめにして減価償却する方法ではなく、構築物や動産などに細分化して個々の資産ごとに減価償却する方法がある。

 

フェンス等は構築物とし、その他の備品、冷蔵庫・洗濯乾燥機・ガスオーブンなどの大型家電は動産とし取得価額を細分化することもできるだろう。フェンス等は再販可能かというと難しいかもしれないが、冷蔵庫などは中古市場があれば再販や調達できるだろうし、もともとの法定耐用年数も建物に比べれば短いだろうし、税法上の中古の耐用年数の規定の適用が可能だろう。市場が存在すれば、商機が生まれるということだろう。

 

また、生前稼いだお金について相続人がいない場合、そのお金は相続人がいない場合には相続財産法人が選定され、最終的に国庫に帰属してしまう。もちろん市中に流れた貨幣が国庫に戻ってきただけだ。

 

しかし、そのお金をもっと有効活用する方法として、財団を設立し奨学金として世のため人のためとして資金を有効活用することも可能だろう。日本では基金財団という名前ではなく「一般財団法人」という法人形態で設立することになろう。

 

一般財団法人も国の公益認定を受ければ公益財団法人となり、公益事業については法人税が課税されない。しかし公益認定をうけるにはかなりハードルが高い。一般財団法人としての活用が射程だろう。自己資金のみならず寄付や助成金を募り、潤沢に資金を法人内に留保し、奨学金の運営がしやすい。

 

また世のため人のためという本人の意思に沿う形で資金を拠出できる。法人に寄付する側は認定を受けた財団法人に寄付すれば、寄付金控除の恩恵を受けることができる。本人からすると、相続や相続税の困難を気にする必要はない。少子高齢化かつ資金余りの世の中においてひとつの指針になるだろう。

 

 

矢部 将生
古橋隆之税理士事務所

 

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