※画像はイメージです/PIXTA

近年、富裕層への課税が非常に重くなっています。資産を維持・移転するために様々な手段を講じてきた富裕層たちですが、選択肢は確実に狭まっているのです。本記事では、富裕層狙いの税制について解説するとともに、今後の資産防衛の手段について考察します。国際税務に強みを持つ古橋隆之税理士事務所の、矢部将生税理士の解説です。

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どこまでも追われ続ける「富裕層の資産」

アベノミクスという異次元金融緩和により、資金は株式市場へと向かったが、資金供給が終われば、安定市場である公債・国債、安定した企業が発行する社債へと向かっていった。国内の市場価格が高まれば、一般の食料品などの日常品の価格も高騰し始めているのは、インターネットやテレビを見れば自明である。

 

インフレも徐々に高まり、一般人の収入もそれに応じて高まれば、経済が自動的に回り繁栄していくのは当然であり、戦後の日本の復興もその過程をたどって繁栄してきたが、それは過去の話である。地価の高騰により不動産価格が上がれば、固定資産税や流通税も上がることとなり、富裕層への打撃は大きくなる。

 

富裕層への重課をまずあげるなら、相続税の基礎控除の引き下げだろう。税制改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったが、平成27年1月1日以降は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変更された。

 

次に、高額所得者の給与所得控除の一律化で、平成28年時点では1,200万円超所得に対する給与所得控除は230万円だったが、令和2年分以降は850万円超の所得に対する給与所得控除は195万円となり、高所得者への累進課税を強化している。

 

また、出国税(国外転出時課税、個人が含み益のある株式等を保有したまま海外に移転し譲渡益が課税されない国で課税を実現させることを防ぐため、国外に出国したときに課税する制度)、富裕層の財産把握を目的とする国外財産調書制度・財産債務調書制度、勤続年数の少ない法人役員の退職金については、退職所得控除を制限する措置、一部全額損金商品の生命保険の封じ込め、外国不動産の減価償却費用の損金算入制限などが挙げられよう。

 

また、今後税制改正の可能性のある「富裕層」狙いの税制等として挙げられるのは、相続税と贈与税の一体化であるが、先日自民党が公表した令和4年度(2022年度)税制改正大綱では税制改正が見送られた。また、大口株主の源泉分離課税適用範囲の縮小(直接会社の発行済株式の3%以上を保有する個人が規制の対象だったが、その個人が支配関係を持つ同族会社を通じて会社の株式を保有している場合の、その所有割合も3%の判定に含める予定となっている。

 

もうひとつ節税手段が封じ込められたものといえば、ドローン節税と足場節税が挙げられる。少額減価償却資産の損金算入という規定があり、30万円未満の減価償却資産であれば、通常耐用年数に応じて償却されるところ、一時償却が可能となる。この規定を利用して小口の資産を使って償却可能となるもので、今回の税制改正では貸付事業の用に供する資産については一時償却の対象から除かれることとなる。節税手法としてはオペレーティングリース商品のようにリース貸付前提のもので、ドローンや足場の貸付前提のものが封じ込めの対象だろう(通常使用部分は30万円未満であれば、もちろん一時損金可能だろう)。

 

贈与税と相続税の一体化=110万円の贈与税の基礎控除が廃止され、相続時精算課税制度のみ残る形で、富裕層にとっては無税でコツコツ資産を移転できる暦年贈与が廃止されるのは、実質的に増税となることだろう。

 

富裕層が課税庁から狙われているという見方も散見されるが、110万円の贈与税の基礎控除の恩恵にあずかれるのはおカネをもつ富裕層であり、この部分では富裕層向けへの狙い打ちという見方は当然だが、昨今でいうと、逆進性の高いといわれている消費税の増税は、課税支出の多い一般大衆にとっては増税ともいえて、税の徴収という観点で見るなら平仄を合わせる形になったのだろう。

 

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