(※写真はイメージです/PIXTA)

採用における、学歴での区分が問題となっています。学歴で採用の機会が左右されるのは不平等だ、という意見も、ひとつの指標とするのは当然だ、という意見もそれぞれ見受けられますが、そもそも「就職差別」とはなにを指す言葉なのか? そして「就職差別」の現状はどのようなものなのか? 厚生労働省の発表を見ていきましょう。

「尊敬する人物は?」は不適切…“公正な採用選考”とは

厚生労働省は「公正な採用選考」の基本的な考え方として、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」の2点を挙げています。

 

そのため、「応募者の適性・能力」とは関係のない事柄で採否を決定することを否定しており、法令でも「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」などの収集は原則として認められていません。

 

適性・能力と関係のない事柄としては、以下が挙げられています。

 

【本人に責任のない事項】

 

●本籍・出生地に関すること (※「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)

 

●家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(※家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)

 

●住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)

 

●生活環境・家庭環境などに関すること

 

【本来自由であるべき事項】

 

●宗教に関すること

 

●支持政党に関すること

 

●人生観、生活信条に関すること

 

●尊敬する人物に関すること

 

●思想に関すること

 

●労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること

 

●購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

 

「尊敬する人物は?」「影響を受けた書籍は?」など、面接の場で聞かれそうな質問ですから、実際に尋ねられたことがある方、不適切とされることに驚く方もいるのではないでしょうか。

 

また身辺調査や、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断を実施することについても就職差別につながることとされています。

 

なお、パイロットは選考時に身体検査が必ずおこなわれますが、これは航空法で定められていることであり、業務の内容からしても十分必要性が認められます。「合理的・客観的に必要性が」と付言されているのはそのためです。

 

こうしたポイントがあるなか、令和2年度、ハローワークにて応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があった797件の内訳は、

 

●家族に関すること 46.9%

 

●思想 13.1%

 

●住宅状況 10.9%

 

●本籍・出生地 3.8%

 

●健康診断 0.9%

 

●その他 24.4%

 

であり、不適切な採用選考は特に「家族に関すること」で根強い実態があります。

 

雰囲気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようですが、面接官は注意しなければなりません。応募者としても、不適切な項目は把握しておきたいものです。

 

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