前回は、私募リートの投資対象が「区分所有建物」であった場合のリスクについて説明しました。今回は、投資対象が「借地物件」であった場合のリスクを見ていきます。

「期限」の到来で消滅する借地権

(11)借地権に関するリスク

投資法人は、借地権(土地の賃借権及び地上権)と借地権設定地上の建物(借地物件)に投資することがありますが、借地物件は、土地建物ともに所有する場合に比べ、特有のリスクがあります。

 

まず、借地権は、土地の賃借権の場合も地上権の場合も、永久に存続するものではなく、期限の到来により消滅し、借地権設定者側に正当な事由がある場合には更新を拒絶されることがあり、また、借地権者側に地代不払い等の債務不履行があれば解除により終了することもあります。借地権が消滅すれば、建物買取請求権が確保されている場合を除き、建物を取り壊して土地を返還しなければなりません。仮に、建物買取請求が認められても投資法人が希望する価格で買い取られる保証はありません。

借地権取得時に差し入れた保証金が返還されない恐れも

さらに、敷地が売却されたり、抵当権の実行により処分されることがありますが、この場合に、投資法人が借地権について民法、建物保護法(建物保護ニ関スル法律)又は借地借家法等の法令にしたがい対抗要件を具備していなかったり、競売等が先順位の対抗要件を具備した担保権の実行によるものであるときは、投資法人は、譲受人や買受人に自己の借地権を主張できなくなります。

 

また、借地権が土地の賃借権である場合には、これを取得したり、譲渡したりする場合には、賃貸人の承諾が必要になります。この承諾が速やかに得られる保証はなく、また、得られたとしても承諾料の支払いを要求されることがあります。その結果、投資法人が希望する時期や売却価格を含む条件で借地物件を処分することができないおそれがあります。

 

また、投資法人が借地権を取得するに際して保証金を支払うこともありえますが、借地を明け渡す際に、敷地所有者の資力が保証金返還に足りないときは、保証金の全部または一部の返還を受けられないおそれがあります。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

世界一わかりやすい私募REITの教科書

初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録