(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●重症化リスクとワクチン効果についてシナリオを4つ想定、それぞれにおける日経平均の動きを考える。

●重症化リスクが高く、ワクチンの効果が低ければ、短期的に株価は急落、ただその後は反転上昇へ。

●流動性相場の存在とワクチンの接種・開発で、4つのシナリオいずれも長期では株高が見込まれる。

重症化リスクとワクチン効果についてシナリオを4つ想定、それぞれにおける日経平均の動きを考える

世界の金融市場は、新型コロナウイルスの新たな変異型である「オミクロン型」に関する情報に、敏感に反応する動きが続いています。日本時間11月30日の午後2時過ぎ頃、米バイオ製薬大手モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)が、オミクロン型に対する既存ワクチンの有効性はかなり低いと発言したことが伝わると、日本株やアジア株は総じて下げ足を早め、その後の欧米市場でも主要株価指数が大きく下落しました。

 

これまでの報道を踏まえると、オミクロン型の「感染力」はデルタ型より強いとみられ、「重症化リスク」は初期段階のためまだ十分な情報がなく、「既存ワクチンの有効性」は分析が進められている最中、ということになります。市場の関心も、重症化リスクと既存ワクチンの有効性にあると思われるため、以下、これらに関する4つのシナリオを想定し、それぞれのケースにおける日経平均株価の動きについて考えます【図表】。

 

(出所)三井住友DSアセットマネジメント作成
【図表】オミクロン型の性質に関する4つのシナリオと予想される日経平均株価の動き (出所)三井住友DSアセットマネジメント作成

重症化リスクが高く、ワクチンの効果が低ければ、短期的に株価は急落、ただその後は反転上昇へ

まず、①重症化リスクが高く、既存ワクチンの効果が低いと判明した場合、日経平均株価は8月20日につけた終値ベースの年初来安値(27,013円25銭)を更新する恐れがあります。ただ、米国が金融政策正常化のペースを遅らせるなど、世界的に金融緩和が続くとの見方が広がれば、流動性相場に支えられて株価が反発し、下落局面は短期間で終了することも考えられます。また、新型ワクチンの開発期待で株高が継続する展開も見込まれます。

 

次に、②重症化リスクが高くても、既存ワクチンの効果も高いと判明した場合、日経平均株価は下げ止まり、既存ワクチンの接種が進むとの期待から、株価は上昇に転じることが予想されます。また、③重症化リスクが低く、既存ワクチンの効果も低いと判明した場合、日経平均株価はしばらく軟調な地合いが続くと想定されますが、時間の経過とともに、新型ワクチンの開発期待が株価を押し上げていくと思われます。

流動性相場の存在とワクチンの接種・開発で、4つのシナリオいずれも長期では株高が見込まれる

そして、④重症化リスクが低く、既存ワクチンの効果が高いと判明した場合、日経平均株価は急速に値を戻すことが予想されます。このケースでは、オミクロン型という悪材料がほぼ消化されるため、市場の焦点は再び供給制約や米国の金融政策正常化に移り、株価急騰後の上値は次第に重くなると思われます。ただ、既存ワクチンの接種が世界的に進めば、供給制約は早期に解消され、米国は金融政策の正常化を急ぐ必要はなくなります。

 

以上を踏まえると、日経平均株価は、オミクロン型の性質次第で、短期的に異なる反応が想定されるものの、長期の観点では、①から④いずれも上昇が見込まれます。長期株高の背景には、流動性相場の存在と、ワクチンの接種・開発があると考えられます。なお、市場はすでにある程度、コロナの感染に慣れたこともあり、①のケースでも、2020年の1月から3月にみられたような30%超の下落には至らない公算が大きいとみています。

 

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『オミクロン型の性質と日本株の動きについて想定されるシナリオ』を参照)。

 

(2021年12月1日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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