前回は、私募リートとJリートを比較し、近年はJリートが活況を取り戻していることを説明しました。今回は価格と換金のしやすさについて説明します。

私募リートはJリートに比べて価格が安定

Jリートの基本的な仕組みは、前回ご説明したとおり私募リートと変わりありません。すなわち、投資法人が資産を保有するものの、実際の運用は資産運用会社によって行われます。また、いずれも投信法のルールにしたがって運営されています。

 

では、私募リートとJリートはどのような点が異なるのでしょうか。

 

まず、Jリートは上場されており市場で売り買いが行われるため、金利や経済、不動産市況など様々な外部的要因の影響を受けて、投資口価格が日々上下することを避けられません。一定の期間内に大量の売却が出た場合には、大きく価格が下落するおそれもあるでしょう。その場合、投資主は、投資証券を取得した価格以上で売却できない可能性があり、大きな損失を被る危険があります。

 

一方、私募リートは、非上場であり市場で売買されることはありません。投資口の基準価格は各決算期に不動産鑑定評価による評価額をベースに算定されるため、Jリートのように日々増減するようなことはありません。

換金性についてはJリートが有利

他方で、換金のしやすさという点に関しては、証券取引所に上場されているJリートの方が有利であるといえるかもしれません。投資資金を回収したい場合は、市場で売却すればよいだけです。

 

それに対して、私募リートは売買市場が存在しないため、換金については、投資口の払戻しと投資家間の相対の取引に限定されています。しかも、投資口の払戻しについては一定の制限が課されている場合が多く、また相対の取引については必ずしも買い手が見つかるとは限りません。その点で、私募リートが流動性に関してリスクを抱えていることは否めないでしょう。

 

もっとも、実はJリートも、潜在的には私募リートと同様の流動性リスクを抱えています。すなわち、投資法人の資産総額や投資口の売買高が減少するなど、東京証券取引所の定める上場廃止基準に抵触する場合には、Jリートの上場は廃止されることになります。上場が廃止された場合、投資主は、保有するリートを相対で譲渡する以外に換金の手段がなくなってしまいます。この点については、Jリートに対して投資する際に十分意識しておく必要があるでしょう。

本連載は、2016年1月25日刊行の書籍『世界一わかりやすい私募REITの教科書』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい私募REITの教科書

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初村 美宏

幻冬舎メディアコンサルティング

取引所に上場せず、オープンエンドで運用される不動産投資ファンド「私募REIT」。 1990年代にアメリカで人気となり日本でも2001年から発売が開始、不動産投資市場でも急成長を遂げている人気の投資商品である。主な投資者は機…

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