(写真はイメージです/PIXTA)

想像はしたくありませんが、もしも自社で事故が起きて労災認定されてしまったら…会社はどのような責任を負い、どのような影響を受けるのでしょうか。本記事では、企業の労務管理に詳しい弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の代表弁護士の西川暢春氏が、会社が労災認定された場合に受ける影響について解説します。

その他の主な影響

4.入札で指名停止処分を受ける可能性がある

 

行政の入札に参加している会社は、入札で指名停止処分を受けることがあります。これは自治体などの入札では「指名停止措置要綱」を設けられていることが多くあります。重大な労働災害が発生し、「指名停止措置要綱」に抵触した会社には、競争入札の参加資格を停止される可能性があります。

 

5.会社や責任者が刑事罰を受けることがある

 

重大な労災事故が発生してしまった際には、労働安全衛生法の法令違反に問われることがあります。もし労働安全衛生法違反が認められてしまうと、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます。

 

また、従業員が労災事故によって負傷や亡くなった場合は、業務上過失致傷罪あるいは業務上過失致死罪に問われ、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に科せられることになります。

 

6.行政処分を受ける(業種による)

 

建設業や派遣業など、国の許認可がいる業種では労災事故が発生すると、法令に違反したとして、指示処分や営業停止処分などの対象になることがあります。

 

7.報道などで、取引先などの信頼を失う可能性がある

 

死亡事故や重大事故が発生してしまうと、それが報道される可能性があります。その場合、会社のイメージが低下し、結果として顧客や取引先を失うことにつながりかねません。

労災発生時に気を付けるべき会社側の対応

労災発生時の会社の対応として、損害賠償の観点から大事なことは、

 

1.労災発生時の正確な事実確認

2.「事業主証明」に適切に対応する

3.労働者死傷病報告、事故報告を正確におこなう

4.事業主の意見申出制度を活用する

 

の4点になります。以下でそれぞれ詳しく解説します。

 

1.労災発生時の正確な事実確認

労災発生にはまず、正確な事実確認をする必要があります。

 

どのような事故が起こったのか、事故原因はなんなのか、といったことについて、会社として正確な事実確認をするということが第一に必要となります。

 

2.「事業主証明」に適切に対応する

「事業主証明」に適切に対応する必要があります。「事業主証明」とは、従業員が労災を申請する際に、会社側がどのような事故が発生したのか、ということを証明する欄があり、これを「事業主証明」といいます。これに正しい事故内容を書いて事業主証明する、ということが非常に重要です。

 

この事業主証明欄が間違っていると、間違った事故内容を元に会社が責任を負ってしまうという可能性があります。そのため、事業主証明は正確に、慎重におこなってください。

 

3. 労働者死傷病報告、事故報告を正確におこなう

労災事故で従業員が負傷した場合は、労働者死傷病報告や事故報告などが必要になることがあります。

 

これについてどのような労災事故か、ということを記載する欄があります。ここに間違った記載をしてしまうと、あとで間違った事故内容を元に会社が責任を負うことになってしまいます。そのため、正しい報告をすることが重要です。

 

4.事業主の意見申出制度を活用する

事業主の意見申出制度という制度があります。労災認定の手続きのなかで、会社側でなにか意見がある場合は、この制度を利用して、会社の意見を労働基準監督署に伝えることができます。

 

そのため、この制度を会社の主張を反映させるという意味で活用していくことも必要かと思います。

 

 

■動画でわかる 「労災」が認定されると会社はどうなる?

 

 

弁護士法人 咲くやこの花法律事務所

代表弁護士 西川 暢春

 

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