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「要介護度」はどのように判定されるか
介護を始めるとき、まず行なう手続きが要介護認定の申請です。市区町村の役所(役場)の担当課に連絡し、「介護サービスを受けたい」と伝えると、申請書の提出が求められます。
申請書に主治医の名前など必要事項を記入し、介護保険被保険者証を提出すると、要介護認定の訪問調査が入ることになります。都合のつく日時に調査員が自宅を訪ねてきて、利用者本人と介護者に聞き取り調査を行ない、要介護度を判定するのです。
調査の項目は「身体機能・起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会生活への適応」。この聞き取り調査では、サービス利用者(介護される人。多くは親)と介護する人(多くは子)のあいだに意見の相違が生じがちです。
介護する人は、認定員が来ることになれば、少しは要介護度について勉強するものです。そして、サービスを受ける側とすれば、要介護度が高いほうが有利だということがなんとなくわかってきます。心身の状態と要介護度の目安を見くらべ、1か2に該当しそうだったら2、2か3だったら3の認定を受けたいと思うのです。
それは、要介護度に応じてサービスの支給限度額があり、要介護度が重くなるほどその額が上がるからです。受けるサービスを決め、限度額内でやりくりするのはケアマネですが、介護者としては、その限度額が高いほうが、より多くのサービスが受けられるため、安心できるのです。
ところが、サービスの利用者である親の思いは違います。「少しでも元気に見られたい」という意識が働いて、要介護度を軽くしようとするのです。
たとえば、調査員が「片足立ちができるか」をチェックすると、いつもはできないのに頑張って片足立ちを成功させたりする。認知症でふだんはまともな会話ができない人が、調査員の前ではしっかり受け答えをすることもあるのです。
まさに“親の心子知らず”ならぬ“子の心親知らず”の状態。「調査員相手に見栄をはっても仕方がないのに」と思っても、親には伝わらないのです。だから、聞き取りを終えて部屋を出た調査員に、「いつもは、あんなにしっかりしていないんです」と耳打ちしたりすることになる。要介護認定では、このような親子間の心理的葛藤があるのです。