(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産小口化商品は、賃貸マンション1棟を購入する場合と比べると、少額の資金で不動産投資ができるのが利点の一つです。しかし、現実には資金的に余裕のあるはずの富裕層が不動産小口化商品に注目し、非常に人気があるのはなぜでしょうか。*本連載では株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長の蜂谷二郎氏が「不動産小口化商品」について解説します。

1棟マンションは節税効果は高いが、分割が難しい

■現金などと比べて税負担が軽く、事前に相続対策を進めるうえでも有利

 

不動産小口化商品にはいくつかの種類があり、特に富裕層の間で支持されているのは「任意組合型」と呼ばれるタイプです。なぜなら、このタイプでは投資家は賃貸マンションを保有する任意組合に出資します。民法上、組合員は組合財産の持分を有します(通常の共有でなく合有ですが)。相続税計算において、出資金の評価額を算定する場合、組合財産の持分を評価して算定します。よって、組合財産が不動産のみの場合、出資金は不動産評価額と同額となることから、資産の圧縮効果が相続に有利に働くためです。

 

相続税の課税額を算出する際、不動産は現金などと比べて時価よりも割安に評価されるようになっています。現金で所有していた資産が額面通りの相続税評価額となるのに対し、土地は時価の概ね80%に相当する評価額となるうえ、マンションなどを建てて他人に貸していると、さらに20%程度も減額されます。しかも、「小規模宅地等の特例」という制度を適用できれば、土地の相続税評価額をさらに50%も減額できます。

 

建物についても時価よりも割安な相続税評価額になり、他人に貸している場合はさらに減額されます。こうして評価額が下がれば、その分だけ相続税の負担が減ることになります。

 

相続の問題が間近に迫る前から着実に対策を進めるうえでも、不動産小口化商品は非常に重宝する存在だと言えるでしょう。なぜなら、資産を遺す人(被相続人)の存命中に課税対象(相続財産)をできるだけ減らしておく「生前贈与」を進めるうえで有効な選択肢となってくるからです。

 

将来的に相続人となる人への「生前贈与」を行う際の注意点は、年間110万円を超えると贈与税が課されることです。

 

しかし、不動産小口化商品なら先に触れた相続税のケースと同様、贈与税を計算する際にも不動産の評価額は現金よりもかなり低くなり、同額の現金を贈与するケースよりも税負担が軽くなります。

 

■相続人の数が多くても分けやすく、納税資金にも充てられる

 

2015年1月から相続税の課税強化(基礎控除額の引き下げと税率の引き上げ)が実施され、相続問題は富裕層だけの悩みではなくなっています。そのうえ、莫大な遺産ではなかったとしても、分け方を巡って相続人同士の意見が対立して関係が悪化するケースが増えています。

 

いわゆる“争族”で、承継させる資産の規模が大きくなるほど、いさかいが生じるリスクはいっそう高まっていくでしょう。富裕層の相続対策においては、「相続人同士が揉めないようにどう分けるか?」というテーマも重要になってくるわけです。

 

そういった観点に立つと、一棟マンションは相続税の節税効果が大きいものの、分け合うのは難しいのが現実です。安易に相続人間で共有名義にした結果、先々でその処分(売却)を巡って揉めに揉めたというケースも少なくありません。

 

かといって、相続人となる家族の数だけ一棟マンションを購入するのは、けっして簡単な話ではないでしょう。しかし、不動産小口化商品なら相続人の数に応じて複数口を購入することが容易です。また、資金が必要になった際、一棟不動産は一部分のみ売却して現金化することが難しいのがネックですが、不動産小口化商品なら必要な口数のみの売却が可能です。不動産小口化商品を相続対策に活用中の富裕層は、こうしたメリットに着目しているのです。

 

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