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緊迫した状況下、現地報道は「抑え気味」
恒大上期財務報告では負債総額2兆元弱だが(1元=18円弱)、その他簿外・偶発債務が1兆元(ゴールドマンサックス推計)。10月末時点、遅延していた債務返済の履行や住宅工事再開(珠江デルタ40カ所)といった動きもあるが、今後も満期を迎える債務が相次ぐ予定で状況は予断を許さない。中国内でも投資家や住宅購入者の関心は高く、海外華字誌によると某関連サイト閲覧数は1.6億以上。
ただ新華社や人民日報など官製メディアは社会不安定化要因とみてか関連報道は少なく、騰訊や網易などのサイトや経済専門誌も抑制的に報道している。「恒大が倒産?」「倒産したら購入した住宅や投資したカネはどうなる」といった投資家の懸念に対し、「負債を超える2.3兆元の資産があり倒産はない」「万が一倒産しても、資産整理で債務返済され投資家が損失を蒙ることはない」など、混乱を抑えようとする報道が多い。
2016年以来、米経済誌フォーチュンが世界を代表する企業の1つに挙げている恒大の「カネは一体どこに消えたのか?」との一般投資家の素朴な疑問に対し、恒大の株主への巨額利益還元(分紅)は有名で、その大部分は恒大創業者の許家印氏とその「友人の重要株主」に流れ、許氏への分紅は17年以降400億元と報道。許氏は騒ぎが起こる1カ月前に恒大集団の中核をなす恒大地産の法定代表人を降りて後任に責任をかぶせ(背黒鍋。背中に黒い鍋を背負う→罪をひっかぶる)、自身は400億元を持って逃げた(脱身)など、同氏を非難する書き込みも目に付く。
許氏は10月下旬恒大復工復産専門内部会議で、債務リスクを克服する戦略として、不動産開発・建設規模を圧縮し(販売額2020年7000億元強→10年以内に2000億元)、新エネルギー自動車産業を核とする集団に転換するとした。直後、恒大関係の株価は一時的に急騰したが、中国内で同市場の競争は激しく、資金・技術・販売面でうまくいくのか市場で懐疑的な見方が多い一方、中央国有企業(国企)が恒大を引き取ることで当局と合意したうえでの発言との憶測もある。
すでに8月、騰訊は「許家印は王健林が関連会社の投げ売りをして自らを救ったことに学べ」として、「東の壁を壊して西の壁を補強」、つまり応急策として資産売却を提唱(図表1)。王健林氏は恒大と並ぶ開発業者を抱える万達集団(本社北京)創業者。万達は2017年経営危機に陥ったことがある。他方、「資産の60%は不動産で1000以上の子会社に分散。すぐに現金化できるわけではなく楽観できない」との指摘もある。
恒大は筆頭株主だった盛京銀行(本拠地瀋陽)の持ち株の一部を国企に売却した他、グループの恒大物業の株売却計画もあった。交渉先は事前に噂のなかった広東省の5大開発業者の1つで私企業の合生創展だったが、交渉は不成立。合意していた文書の支払い条項修正をめぐって双方が対立した。①伝えられた持ち株比率51%の取得には合生手元現金の約半分の200億香港ドルが必要、②国際格付け機関が最近合生格付け見通しを引き下げ、③一部恒大幹部・株主の反対など、複雑な要因がからんだと推測される。
その他、広東省国企などに接触し広州サッカー倶楽部グラウンドやその関連住宅、香港本社ビルの売却も検討。ただ、恒大の複雑な債務状況をみて躊躇する企業が多いという。上記、許氏の長期戦略にもかかわらず、2019年に買収したスウェーデン自動車メーカーNEVS(前身サーブ)の売却についても欧米投資家に接触しているとの話がある。
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