●自民党は単独で絶対安定多数の261議席を獲得し岸田首相は政権基盤を固めることができた。
●岸田首相は今後、経済対策を打ち出し、自身の政策の具体策となる緊急提言をまとめる見通し。
●衆院選の結果は日本株にとって安心材料だが選挙結果の賞味期限は3ヵ月程度が1つの目安か。
自民党は単独で絶対安定多数の261議席を獲得し岸田首相は政権基盤を固めることができた
第49回衆議院議員総選挙は10月31日に投開票が行われ、自由民主党(以下、自民党)と公明党の連立与党は293議席を獲得する結果となりました(図表1)。
与党の議席数は、衆院解散時の305議席から12議席の減少にとどまり、岸田文雄首相(自民党総裁)が今回の衆院選の勝敗ラインとして掲げた「与党で過半数(233議席)」を大きく超え、絶対安定多数(261議席)を上回りました。
ただ、この勝敗ラインはそれほど高いハードルではなかったため、市場の関心は与党の議席数ではなく、自民党単独の議席数に集まっていました。衆院選の結果、自民党の議席数は276議席から15議席減少し、261議席となりました。選挙直前は、単独過半数割れの懸念も一部にみられましたが、結局、自民党単独で絶対安定多数を獲得し、岸田首相は政権基盤を固めることができました。
岸田首相は今後、経済対策を打ち出し、自身の政策の具体策となる緊急提言をまとめる見通し
衆院選は終わりましたが、来年夏には参院選が控えています。参議院において、自民党の議席は単独過半数に達しておらず、公明党との議席をあわせて過半数を確保しています。そのため、岸田首相は次の参院選を強く意識して政策を進めていくと思われます。まずは経済対策に新型コロナ対策を盛り込み、数十兆円規模とされる経済対策の裏付けとなる今年度補正予算の年内成立を目指すとみられます。
なお、岸田首相は成長と分配の好循環を強く訴えていますが、市場では分配の原資について具体性に乏しいとの声が多く聞かれます。こうしたなか、岸田首相は10月26日、「新しい資本主義実現会議」の初会合を開き、具体策の議論を開始しました。具体策は、11月上旬に、緊急提言としてまとめられ、2022年度の税制改正大綱や予算案に反映される見通しとなっています。
衆院選の結果は日本株にとって安心材料だが選挙結果の賞味期限は3ヵ月程度が1つの目安か
今回、自民党の議席数が懸念されたほど減少しなかったため、岸田首相の求心力低下リスクは大きく後退し、長期政権への期待も残ったと考えられます。そのため、衆院選の結果は、日本株にとってまずは安心材料になったと思われます。実際、11月1日の日経平均株価をみると、前週末比437円99銭(1.5%)高の、29,330円68銭で寄り付き、好反応を示しています。
なお、前回2017年10月の衆院選では、与党圧勝を受け、日経平均株価は2017年10月20日(衆院選直前の営業日)から2018年1月23日まで、終値ベースで12.4%上昇しました(図表2)。
ただ、その後は米利上げペース加速懸念や森友問題での安倍内閣支持率低下などで、2018年2月には衆院選前の水準に戻っています。株式市場にとって、選挙結果の賞味期限は、それほど長くなく、3ヵ月程度が1つの目安と思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『衆院選の結果が日本株に与える影響について』を参照)。
(2021年11月1日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト