【関連記事】中小企業経営者「自社株式の贈与・相続」が問題となるケース
コロナ禍で必要性が高まる「変化対応力」
2020年には、さまざまな会社の動きが見えました。
三越伊勢丹ホールディングスは、子会社で賃貸住宅事業を手掛ける三越伊勢丹不動産をブラックストーン・グループに300億円で売却するそうです。
外資による日本不動産投資という側面がありますが、三越伊勢丹HDにとっては経営のスリム化。選択と集中。個人的には、いまは賃貸住宅を売却しないほうがよいのではとも思いますが…。コロナで離れた消費者が売り場に戻ってこない苦しさが原因でしょうか。
青山商事は、単体正社員の1割に相当する約400人の希望退職者を募集するそうです。約80店の閉店計画も発表。コロナ禍によってリモートワークが進んで、スーツ需要が一気に落ち込んだのだそうです。
エイベックスは、東京都港区の本社ビル売却を検討しているそうです。すでに2020年4月~9月期は17億円の赤字だったそうですが、コロナ感染拡大の影響でライブ中止したことで、2021年4月~9月期は32億円の赤字。不動産売却に合わせて、100人の希望退職者も募集します。
今後ますます、新型コロナがさまざまなビジネスに想定外の変化対応の必要性をもたらしていきます。
倒産件数は過去30年で最少、小規模倒産は過去最高
東京商工リサーチがまとめた2020年(1月~12月)の「年間全国企業倒産状況」によれば、全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数7,779件(前年比7.2%減)、負債総額は1兆2200億円(どう14.2%減)だったそうです。
件数は、政府・自治体・金融機関の緊急避難的な資金繰り支援が奏功し、7月以降、6カ月連続で前年同月を下回り、年間では2018年以来、2年ぶりに前年を下回った。8,000件を下回ったのは30年ぶりといいます。
一方で、2020年(1月~12月)「負債額1,000万円未満」の企業倒産は、630件(前年比23.0%増)と急増、2000年以降で年間最多だった2010年(537件)を上回り、初めて年間600件を突破したそうです。
マーケティングや事業計画が甘い安易な起業や、資金力が乏しい小・零細企業ほど新型コロナ感染拡大で打撃を受け、先行きの見通しが立たず、行き詰まるケースが多いそうです。
企業体力が脆弱な小・零細企業、商店は、ニューノーマルに向けて動き出したいところですが、厳しい経営環境に巻き込まれ、負債額1,000万円未満の小規模な倒産が増加。この動きは今後、負債1,000万円以上の企業倒産の動向を示す可能性が高いと東京商工リサーチでは分析しています。
「第三者の目」を入れる事業承継の活用
新型コロナ禍で喪失したキャッシュインフローをカバーするために、今までとは違うサービスや商材を生み出す必要があります。あるいはやり方に工夫を加えて、生産性を向上させる必要があります。
経営者が変化対応を率先していきたいものですが、自己変革は難しいものです。第三者の目が入れば、新しいアイデアが出てきます。惰性の経営になっている中小企業も少なくありませんが、そうなっていなくても当事者では気がつかないことも多くあります。
「第三者の目」を入れるにはどうすれば良いか。この一つの答えは「事業承継」ではないでしょうか。
息子、娘が事業を引き継ぐ、親族が引き継ぐ、従業員が引き継ぐ場合がありますが、後継者はいずれの場合も今の経営者より若いでしょう。世代が変われば、感覚がかわります。多くの場合で、ITに対する感覚も後継者の方が優れています。
同じサービス、商材でも、同じビジネスでも今までとは違った観点で新しい価値が生み出されることがあります。あるいは業務が効率化されることがあります。
親族や従業員に経営を引き継げないケースはどうすれば良いのでしょうか。第三者事業承継、つまり「M&A」です。
M&Aは、多くの場合に純然たる第三者に経営が引き継がれます。小さなことから大きなことまでさまざまな変化が生じ、結果としてドラスティックに経営が変わっていきます。経営が変わることにより、新たなサービス、商材が生まれます。ビジネスが洗練されます。業務が劇的に効率的になることもあります。
「事業承継」は、どのような形であっても、中小企業の企業価値向上を考えるうえで必要な通過点ではないでしょうか。新型コロナ禍でそのように考えるようになりました。
川原 大典
みどり財産コンサルタンツ
代表取締役社長