介護チームが崩壊…費用をギリギリまで切りつめるケアマネの罪

相沢 光一
介護チームが崩壊…費用をギリギリまで切りつめるケアマネの罪
(※画像はイメージです/PIXTA)

介護と仕事の両立は難しいものです。簡単に結論を出せる問題ではありません。 ※本連載は相沢光一著『介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ』(河出書房新社)より一部を抜粋、再編集したものです。登場するケアマネの方々、サービス事業者の方々のお名前は、すべて仮名です。

成功体験がチームを崩壊させることも

憤懣が消えない和田さんは、河野さんのことを知るケアマネを探し出し、どんな人物なのかを聞いたといいます。

 

そのケアマネは「河野さんも相変らずだなあ」と苦笑しながら、こんな話をしてくれました。

 

「河野さんは、介護は奉仕の精神が第一という考え方に凝り固まっていて、ビジネスに結びつける人を極端に嫌うんです。それを強固にする成功体験ももっています。昔、経済的に困窮した利用者さんを担当したことがあって、負担を極限まで切りつめるケアプランで支援をして喜ばれたんです。

 

それ以来、介護負担を軽くするのがケアマネの役目、利益追求に走るサービス事業者から利用者を守る防波堤になろうという意識さえもつようになった。以来、介護費用は安くするのが最善という発想を貫ぬいているんです」

 

和田さんが「私はビジネス第一で利用者さんと接しているわけではありません」というと、そのケアマネは「そんなことはわかっています。でも、河野さんはわかろうとしないんです」。

 

問題を複雑にしているのは、一部ですが介護業界にもビジネス優先、利益追求を第一に考えている業者や営業マンがいることです。

 

「だからといって、すべてのサービス事業者をそうだと決めつけることはないじゃないですか。多くのサービス事業者は、利用者さんのことを第一に考えて仕事をしている。その思いをくみ取ろうとしないケアマネのもとでは仕事はできませんよ」

 

河野さんも、根は真面目な人なのでしょう。しかし、自分の価値観が最優先で、ともに働く人を信頼していないわけです。

 

こんなケアマネが担当になった利用者は不運です。ケアマネの河野さんとレンタル会社の和田さんのあいだで交わされたやりとりも知らず、月額300円の車椅子を利用することになったわけです。もちろん、和田さんから聞いた説明は頭に残っているでしょう。

 

和田さんの説明を信じてケアマネに要望すれば、600円のタイプにすることもできましたが、なんとなくいいづらく、受け入れることにした。それによって、利用者であるお母さんが苦痛を感じるかもしれないのに、です。

 

なお、和田さんは「河野さんのもとでは二度と仕事をしたくない」と思うようになり、依頼がきたときは、ほかのスタッフに担当してもらうことにしているそうです。

 

 

相沢 光一
フリーライター

 

 

介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ

介護を左右する 頼れるケアマネ 問題なケアマネ

相沢 光一

河出書房新社

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