(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●中国7-9月期実質GDP成長率は前年同期比+4.9%に減速、経済停滞が確認される結果に。

●ただ当局は消費が緩やかな持ち直し局面に入り不動産投資の減少も管理可能な範囲内と判断。

●電力問題も一時的で成長は来年持ち直しへ、株式市場はこの展開を織り込み混乱回避を予想。

中国7-9月期実質GDP成長率は前年同期比+4.9%に減速、経済停滞が確認される結果に

中国国家統計局が10月18日、2021年7-9月期の実質GDP成長率を発表しました。前年同期比の伸び率は+4.9%と、市場予想の同+5.0%を下回り、4-6月期の同+7.9%から鈍化しました(図表1)。

 

(注)2021年10月18日発表分。 (出所)中国国家統計局、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]中国の主要経済指標 (注)2021年10月18日発表分。
(出所)中国国家統計局、Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

また、季節要因を調整した前期比での伸び率は+0.2%と、こちらも市場予想の+0.4%を下回り、4-6月期の+1.2%から鈍化するなど、中国経済の停滞が確認される結果となりました。

 

同時に発表された9月分の主要経済指標では、百貨店やスーパーなどの売り上げを合計した小売売上高は前年同月比+4.4%と、市場予想(同+3.5%)を上回ったものの、工業生産は同+3.1%と、市場予想(同+3.8%)を下回りました。また、工場やマンションの建設などを示す固定資産投資は1-9月で前年同期比+7.3%となりましたが、こちらも市場予想(同+7.8%)を下回りました。

ただ当局は消費が緩やかな持ち直し局面に入り不動産投資の減少も管理可能な範囲内と判断

これら一連の経済指標が示唆する中国経済の成長鈍化の背景には、夏場の新型コロナウイルスの感染再拡大、規制強化を受けた不動産投資の減少、9月に本格化した電力制限といった国内事情に加え、世界的な資源価格の高騰などがあると思われます。こうしたなか、市場では、中国経済の成長鈍化が続き、世界経済や株式市場に悪影響が及ぶのではないかと懸念する向きもみられます。

 

そこで、以下、当面の中国経済の見方や株式市場への影響についてポイントを整理します。まず、中国国内のコロナ感染はすでに収まっており、労働市場が安定し、所得が持ち直すなか、消費は中国国家統計局の判断通り、緩やかな持ち直し局面に入っていると思われ、減速リスクは小さいとみています。また、不動産投資については、同じく中国国家統計局が、減少ペースは管理可能な範囲内との見解を示しています。

電力問題も一時的で成長は来年持ち直しへ、株式市場はこの展開を織り込み混乱回避を予想

また、電力問題について、中国政府は一定程度の電力生産量を確保しながら、エネルギー効率に応じ、産業別に電力供給を変更しているとみられます。中国国家統計局も、電力規制による生産全体への影響はコントロール下にあり、9月の電力制限による混乱は一時的なものとしています。そして原油価格は、中国の統制が及ぶところではありませんが、産油国に供給余力があるという点は理解しておく必要があります。

 

弊社は中国の実質GDP成長率について、年内は成長鈍化が続くものの、中国政府の景気支援スタンスにより、来年以降は徐々に持ち直すとみています(図表2)。

 

(注)2021年10月15日時点における三井住友DSアセットマネジメントの見通し。 (出所)中国国家統計局、CEIC、Bloombergなどのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]中国の実質GDP成長率見通し (注)2021年10月15日時点における三井住友DSアセットマネジメントの見通し。
(出所)中国国家統計局、CEIC、Bloombergなどのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

株式市場への影響については、目先の成長ペース鈍化はある程度想定済みで、ここからは、来年以降の成長持ち直しが徐々に織り込まれていくと思われます。そのため、中国経済の先行きを懸念して株価が大幅に下落する恐れは、現時点で小さいとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国経済は大丈夫なのか』を参照)。

 

(2021年10月19日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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