米テーパリングでも流動性相場は終了せず (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●米金融当局はテーパリングを11月中旬か12月中旬に開始、来年半ばごろ終了の方向で検討中。

●議事要旨では米国債の購入額を100億ドル、MBSを50億ドルそれぞれ毎月減らす案が示された。

●テーパリングでも証券購入は当面続き、FRBの総資産残高は増加するため、流動性相場は継続。

米金融当局はテーパリングを11月中旬か12月中旬に開始、来年半ばごろ終了の方向で検討中

米連邦準備制度理事会(FRB)は10月13日、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(9月21日、22日開催分)を公表しました。9月のFOMCでは、声明文に「経済の改善がおおむね予想通りに進めば、資産購入のペースを早急に緩和する必要があると判断する」との文言が追記され、量的緩和の縮小(テーパリング)開始が近いことが正式に示されました。

 

さらに今回の議事要旨では、テーパリングのスケジュールについて議論が進んでいることが明らかになりました(図表1)。具体的には、FOMC参加者は総じて、景気回復がおおむね順調なら、来年半ばごろに終了する緩やかなテーパリングが適切と評価しており、また、11月2日、3日に開催される次回のFOMCでテーパリング開始を決定する場合、11月中旬か12月中旬に開始できるとの見方が確認されました。

 

(注)2021年10月13日に公表されたFOMCの議事要旨(2021年9月21日、22日開催分)。 (出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]FOMC議事要旨のポイント (注)2021年10月13日に公表されたFOMCの議事要旨(2021年9月21日、22日開催分)。
(出所)FRBの資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

議事要旨では米国債の購入額を100億ドル、MBSを50億ドルそれぞれ毎月減らす案が示された

FRBは現在、米国債を800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を400億ドル、それぞれ毎月購入していますが、議事要旨では、これらの購入金額を減らす案も提示されました。FRBのスタッフによる減額案は、毎月の購入額について、米国債を100億ドル、MBSを50億ドル、それぞれ減らしていくというもので、計算上、8ヵ月でテーパリングを終えることになります。

 

この案について、FOMC参加者は政策を決定する上で分かりやすいと総じて評価しており、実際にテーパリングが開始された際、減額ペースの目安になると思われます。なお、FRBの総資産残高は直近で約8兆5,000億ドルに達していますが、仮に11月からテーパリングが始まり、前述の減額案に沿って米国債とMBSの買い入れ額が減少していった場合、総資産残高はどのように推移するか検証してみます。

テーパリングでも証券購入は当面続き、FRBの総資産残高は増加するため、流動性相場は継続

結果は図表2の通りで、テーパリングが終了する2022年6月末時点において、FRBの総資産残高は約9兆ドルに達する見通しとなり、これは直近から約6%増加した水準です。当然ながら、テーパリングが始まっても、米国債とMBSの毎月の購入額は段階的に減少するものの、購入自体は続くため、金融機関に対する流動性の供給は継続され、FRBの総資産残高は増加し続けることになります。

 

(注)データは2019年1月から2022年6月。2021年10月以降は予想値。総資産残高の月間増加額について、2021年10月は1,200億ドルとし、以降、毎月150億ドルずつ減少していくと仮定。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]FRBの総資産残高の推移 (注)データは2019年1月から2022年6月。2021年10月以降は予想値。総資産残高の月間増加額について、2021年10月は1,200億ドルとし、以降、毎月150億ドルずつ減少していくと仮定。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

なお、FRBは過去、テーパリングが終了しても、満期を迎えた保有証券を再投資することで、総資産残高を3年ほど維持した経緯があります。今回も、テーパリング終了後、総資産残高はしばらく維持される公算が大きいと思われます。したがって、テーパリングによって流動性相場が直ちに終了することはなく、悪材料発生時に潤沢な流動性が金融市場の緩衝材の役割を果たす状況は、当面続くと思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米テーパリングでも流動性相場は終了せず』を参照)。

 

(2021年10月18日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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