オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ここでは、同校で働く教師から寄せられた意見に、同氏が答えていきます。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。
「みんなに嫌われる理由」を尋ねてきた生徒へ、教師がまさかの対応 ※画像はイメージです/PIXTA

喧嘩になる2人…静静は「勻勻はたった一人の友達」と

その後、勻勻は他の人を押しのけて如如(ルールー)の所にやってきて、「隣に座るよ」と言いました。

 

でも空になった席に静静が座ろうとするのを見ると、飛んできて椅子を奪い、「人の席に座るな」と言いました。静静も負けじと椅子をつかみ、「席を立ったんだから、誰が座ってもいいでしょ!」と言い、二人は両側から椅子を引っ張り合い、その場から動かなくなりました。

 

「二人ともうるさいよ。授業中だよ。騒ぐなら外に出てよ!」と雲雲(ユンユン)。

 

「勻勻、隣に座るんでしょう? どうしてそっちに行くの?」と如如。

 

「静静、言うとおりにした方がいい。勻勻は今日変だよ」と陽陽(ヤンヤン)。

 

「二人はいつも仲良しなのに、今日はどうしたの?」と先生が言いました。

 

この言葉を聞いた静静は、椅子から手を放しました。諦めたように「好きにすればいいよ」と言い、元の席に戻ると、はらはらと涙をこぼしました。勻勻は自分には関係ないという顔をして、「次は誰だ? 次は誰だ?」と大声を上げました。

 

この時ちょうどチャイムが鳴ったので、先生は「授業は終わりです。勻勻と静静だけ残ってください」と言いましたが、勻勻は「話さないよ!」と答えました。

 

でも先生が「そう! 授業をめちゃくちゃにした上に、静静の顔を涙と鼻水だらけにしておいて、帰っていいなんてことがあると思う?」と言うと、逃げられないと分かったのか、教室に残りました。

 

先生は「一体なにがあったの?」と二人に尋ね、勻勻に「今日は静静に嫌なことばかり言っているね」と言いました。

 

勻勻は「どこが? 本当にあのモンスターは怖すぎるし、こんな怖い人と友達になりたくないよ」と答えました。

 

「『一番怖いモンスター』のアイディアを出し合った時、君のモンスターも同じくらい怖かったよ! どうして急に静静のモンスターが怖くなるの? 他に理由があるはずだよ」。先生にそう言われたとたん、勻勻は心を閉ざしてしまい、肩をすくめ、だんまりを決め込みました。

 

静静は「勻勻は昨日からこんな態度だった。理由は分からないんだ」と言いました。

 

「ほら! 静静も分からないって言ってるよ。こんなに悲しそうにしているんだから、理由を伝えるべきじゃない?」先生は二人の間に立って、子どもたちに自分で解決させようとしました。

 

勻勻はまた肩をすくめると、「一緒に遊びたくないだけだよ。理由は自分でも分からない。もう行っていいでしょ!」と言いました。

 

先生が「もう行っていい?」と聞くと、静静はうなずきました。でも先生は首を横に振って、「友達にそんな態度を取られたら、混乱してしまうよ。もし同じことをされたら、きっと嫌な気持ちになるよ。仲良くしないと決めたとしても、悪口を言ってはいけないよ! その上、他の子にまで仲良くしないように言うなんて、やりすぎだと思わない?」と言いました。でも勻勻はあかんべえをして、さっさと教室から出ていきました。

 

静静は顔を上げて言いました。「先生! 勻勻は何でも言うことを聞かせたがって、逆らうと冷たい態度を取るんです。でもたった一人の友達だから、嫌われたくないんです」「学校には大勢の人がいるのに、他に友達は見つからないの?」「うん、みんなに嫌われてるから、誰も友達になってくれないと思う」。

 

先生に「試してみた?」と聞かれると、静静はうなずき、自分がみんなに嫌われる理由を尋ねました。