オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ここでは、同校で働く教師から寄せられた意見に、同氏が答えていきます。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。
「みんなに嫌われる理由」を尋ねてきた生徒へ、教師がまさかの対応 ※画像はイメージです/PIXTA

幼少期の経験からくる「心の問題」

あの場にいた私は、静静の顔を見ながら、この子と他の生徒の関係を何とか思い出そうとしました。でも私には分からないことが多すぎて、まずはあなたに本当のことを聞くしかないと思ったのです。

 

その後、静静は他の先生とも話して、「自分の頑固な性格や、突然冗談を言うところが他人には受け入れにくいのかもしれない」と気づきました。図書館の前にあるラタンベンチに座って、じっとこのことを考えていたようです。きっと静静はこの経験から自分と向き合う強さを見つけられるでしょう。

 

自主学習では、このように「自然の流れに任せる」方法で、子どもに今まで見えなかったものを見せようとします。それは、子どもに自分の本当の姿と向き合ってほしいと思うからです。

 

子どもだけでなく、どんな人でも自分をきちんと理解できれば、自分の本当の望みを見つけ出し、自分で目標を達成できる。あるいはその目標を超えることだってできます。

 

そのために教師が生徒にできる最大の手助けは、曇りのない鏡のような心を持ち続けることです。どんな選択をするかは、生徒に任せればいいのです。

 

同時に、教師の方も常に子どもを鏡として自分の限界を見つめなければなりません。そうして子どもと一緒に新しい世界を覗(のぞ)き、これまでにない発見ができれば、これこそ教師と生徒が一緒に学ぶ教育です。

 

人は人と関わる時、いつもそこに自分の姿が映ることを期待しています。心理学によると、人は幼少期に鏡に映った自分の姿に「自己愛」を抱き、それを超えようとします。

 

でもそれに失敗すると、自分の抱くイメージとのギャップに苦しみ、一生他人の承認を求め続けるそうです。

 

また、自分の弱さを認められない人は、世の中(目の前の相手も含め)に対して素直な反応を見せることができず、いつも不安気な表情で自分を覆い隠しているため、「頑固」や「無関心」と思われがちです。「相手を支配したがる」性格の人は、こうした問題を心に抱えている可能性があります。