周辺環境に悪影響を及ぼす「空き家」は撤去できるか?

今回は、近隣に危険を及ぼしかねない「放置された空き家」の問題について見ていきます。 ※本連載は、弁護士・野辺博氏の編著書籍『私道・境界・近隣紛争の法律相談』(学陽書房)の中から一部を抜粋し、私道や境界、放置された空き家などに発生した様々なトラブルについて、法的見地から解決方法を解説します。

Q 家の近所に空き家があります。何年も人の出入りがないようで雑草は伸び放題。虫が異常に発生しています。塀が低いため庭にゴミを捨てていく人もいて、なんとなく悪臭も漂っています。簡単に家の中に入れますので、防犯上の不安もあります。空き家の撤去を求めることはできないでしょうか。

今後も増加が見込まれる「放置空き家」の問題

人口減少や単身赴任等に伴い、空き家が増えています。総務省調査によると、平成25年10月時点での全国の空き家は820万戸、総住宅数に占める空き家の割合は13.5%と過去最高を更新しました。このままの状態で推移すれば空き家率が2023年には21%、2033年には30.2%になるとの試算もあります(野村総合研究所・http://www.nri.com/Home/jp/news/2014/150622_1)。

 

空き家が増えると、以下のような問題が発生します。

 

①廃屋になって倒壊するおそれがある。特に大雪や地震の際などは倒壊しやすく危険であり、避難路を塞ぐおそれもあります。

②ホームレスや地域の「不良」のたまり場となり、放火や不法侵入など犯罪の温床になりやすいです。

③ゴミの不法投棄がされやすく、治安や環境が悪化します。

④害獣、害虫が発生しやすくなります。

⑤景観が悪化します。

 

質問の空き家もまさに近隣に被害をもたらす放置空き家であるといえます。

所有者に義務付けられる「空き家の適正管理」

ではこのような放置空き家に対してはどのような措置を求めることができるでしょうか。

 

平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)が公布され、翌年5月に完全施行されました。これに伴ない「空き家の撤去や有効活用を促進するための基本指針」が出されました。また各自治体でも平成22年10月に埼玉県所沢市で「空き家等の適正管理に関する条例」(空き家条例)が制定されたのを皮切りに全国355以上の自治体で同様の条例が次々に導入されています(平成26年4月1日現在国土交通省)。

 

これらの法律や条例は、所有者に空き家の適正管理を義務付けるものです。すなわち、自治体ごとに空き家を調査し、空き家の所有者に対しては、市町村がその意向を確認しながら適切な管理方法を指導したり、専門業者情報などを紹介したりすることになります。また、空き家データベースに登録して公開し購入や賃貸を検討している人に情報提供することや地域交流スペースとしての活用などに利用すること等を推進します(空き家対策特別措置法13条)。

 

そして、空き家のうち地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす廃屋同然となっている物件を「特定空き家」と認定します。

 

その基準は、「建造物の状況や管理の程度、人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況、所有者の登記や固定資産課税台帳や住民票の内容、所有者の主張などから客観的に空き家かどうか判断すること、そして常態化の基準としては、年間を通して使用されていない事など」(上記基本指針)です。

 

具体的には、倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態などです(同法2条2項)。そして、実効性を確保するため、特定空き家と判断すべきかどうか調べるため、市町村に立ち入り調査の権限が与えられました(同法9条)。空き家の所有者がこれを拒めば20万円以下の過料が科されます(同法16条2項)。

市町村の担当窓口に資料を持参して情報提供を

「特定空き家」と認定された場合、市町村長は、その所有者に対し、除却、修繕、立木等の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう、①助言又は指導、②勧告、③命令することができます(同法14条)。勧告を受けると、固定資産税などの住宅地特例から除外され、固定資産税などが最大6倍にまで跳ね上がることになります(同法15条2項)。

 

もっとも所有者が、勧告又は命令の内容を実施し、その勧告又は命令が撤回された場合、固定資産税等の住宅用地特例の要件を満たせば再び特例が適用されます。勧告を受けても改善されない場合は命令が出されます。命令が出された特定空き家には、その旨の標識が立つことになります。

 

そして命令に従わなければ50万円以下の罰金が科されます(同法16条1項)。倒壊の危険がある場合、市町村長は、所有者の費用で行政代執行を行い、撤去することもできます(同法14条)。

 

本件の空き家は相当深刻な状態であり、「特定空き家」に認定される可能性が高いと思われます。したがって早急に市町村の担当窓口に写真など状況の分かる資料を持参して情報提供して、速やかな対応を促すようにされるとよいでしょう。

野辺法律事務所 所長 弁護士

埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学法学部卒業。1985年弁護士登録、東京弁護士会所属。1989年 野辺法律事務所を開設。2007~2010年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官(上席)、2011~2015年度、慶應義塾大学法科大学院教授。
担当案件として、会社顧問業務のほか、個人の不動産・相続遺言関係を多く取り扱う。

著者紹介

三宅坂総合法律事務所 パートナー 弁護士

私立共立女子高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、1986年4月弁護士登録(東京弁護士会)。1992年ワシントン大学ロースクール修士課程修了。1999年2月三宅坂総合法律事務所パートナーとなり現在に至る。
企業法務・倒産・知的財産権等を専門に取り扱う。

著者紹介

連載私道・境界・近隣紛争の法律相談

私道・境界・近隣紛争の 法律相談

私道・境界・近隣紛争の 法律相談

野辺 博[編著] 野間 自子,道端 慶二郎,小山 裕治,濱口 博史

学陽書房

相隣関係から現代型ご近所トラブルまで、近隣紛争の法的論点を網羅! 私道の通行、袋地(囲繞地)、境界、排水流入など私道・境界をめぐる紛争に、空き家、悪臭、騒音、日照、眺望などのご近所トラブルを加えた近隣トラブル…

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