日本の転職市場において、成功の難易度は「職種」によってほぼ確定してしまうといいます。転職が成功しやすい職種とは? 大手転職サイトの元編集長、黒田真行氏が解説します。※本連載は、黒田真行氏の著書『35歳からの後悔しない転職ノート』を一部抜粋・再編集したものです。
転職の成功率が「高い職種」と「低い職種」【大手転職サイト元編集長が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

転職の成功率が「高い職種」と「低い職種」の具体例

A ハイリスク・ハイリターンの「コントラクト型プレーヤー」

個人で生み出す成果が重視される高付加価値な職種です。

 

固定給比率が低めで、成果型の報酬比率が高いケースが多いことから、「ハイリスク・ハイリターン」という印象を持つ人が多い。そのため景気変動に関係なく、いつも一定の求人需要がありながら、希望者(人材供給)が少なく、常に人手不足になっている領域です。

 

正社員・業務委託契約、場合によってはフランチャイズ型などの雇用形態でも募集されることが多く、転職サイトやエージェントからのスカウトも最も活発に行なわれています。

 

【コントラクト型プレイヤーの例】

・個人向け高額商品・サービス(住宅、リフォーム、生命保険、自動車など)の営業

・セールスドライバー

・個人向け金融サービス営業

・店長候補(外食系)

 

B 組織成果を求められる「エグゼクティブ」「スペシャリスト」

組織としての成果を最大化するために、結果に対する強いコミットメントを求められる領域の職種です。場合によっては、年収3000万円クラスの求人もある超高付加価値型の領域です。

 

事業の中核を司る職種だけに、求人件数は最も少なく、転職サイトなどの公開型の求人よりも、ヘッドハンターやエグゼクティブ専門エージェントが秘密裏に動いてマッチングするケースが多いのも特徴です。

 

求人件数は少ないものの、求められる経験やスキルに細かい条件がつくことが多いために、適合する求職者より求人(需要)のほうが多く、相対的には採用難と言われることが少なくありません。

 

ただ、いったん求人が公開されると、相対的に年齢が高めの採用事例が多く、年収水準が高く魅力的に見えることもあり、企業側から見て募集要件の対象外の求職者を含む大量の応募が殺到して混乱するケースもあります。

 

ビジネス系のエグゼクティブの場合、人材要件が言語化しにくいことや、後述のD領域との境界が不明瞭なことも、ミスマッチを発生させる要因となっています。

 

【エグゼクティブ、スペシャリストの例】

・経営者、CFO(最高財務責任者)

・M&A(合併・買収)スペシャリスト

・知財、法務、金融系のスペシャリスト

・経営・事業企画

・ウェブ系開発エンジニア(プロジェクトマネジャー)

・経営コンサルタント

・施工管理技術者

 

C 定型的なタスクを処理する「オペレーショナルプレーヤー」

契約社員、派遣、アルバイト・パートも含めて、最も求人の数が多いのがこの領域です。手順や業務パターンがシンプルで定型的な業務や運用的な業務が多く、そうした業務が生み出す期待利益に連動して、賃金水準も雇用の安定性も低くなりやすい領域です。

 

相対的に募集要件も緩やかなだけに、求人需要に対して対象となる求職者数も多く、D領域で転職先が決まらない人からの流入も加わるため、よりいっそう供給過多になりやすいゾーンです。

 

【オペレーショナルプレーヤーの例】

・ルートセールス、営業・一般事務、受付

・プログラマー

・販売、接客

・警備、ビルメンテナンス、施設管理、作業員

・コールセンターオペレーター

 

D 組織貢献型の「ゼネラリスト」「ミドルマネジメント」

いわゆる正社員の転職に限定した場合、最も求職者数が多いのがこのD領域です。総合職型の正社員として、組織貢献を求められるゼネラリストやミドルマネジメントの方々です。

 

高付加価値な組織成果を求められる領域でありながら、特に日本の場合、一貫したスペシャリストとしてのキャリアを積みにくく、「新入社員で配属されたのはA事業部の新規開拓営業、3年後にB事業部の既存顧客向け営業に転属され、7年目からは営業企画部門でリーダー」のように、組織のなかで必要に迫られた経歴となり、「なんでも屋ではあるが、何屋とも答えられない」という状況に陥りがちな側面があります。

 

幹部選抜の競争率が激しく、それゆえに年齢が上がるほど求人需要が減少しやすく、ごく一部の人だけがB領域に進む構造になっています。

 

さらに、経済構造の変化も相まって、大半の方が社内・社外にかかわらず「望まないキャリアチェンジ」を迫られるケースが目立っているゾーンです。

 

また、大規模な組織になればなるほど、部下やアウトソース先に依存することが増えて、現場から遠ざかりつつ、管理職となって賃金が上昇するために、かえって転職や異動が難しくなるという、ダブルのマイナス効果もあります。

 

【ゼネラリスト、ミドルマネジメントの例】

・法人向け営業(メーカー、商社、IT、サービス等)

・人事、総務、広報・宣伝

・管理職(営業・管理・情報システム・企画各部門の部長・課長クラス)

 

 

黒田 真行

ルーセントドアーズ株式会社

代表取締役