前職より高い給与でのスタートは、後々つらくなることも
年収だけが自分が評価されるモノサシで、それを自分の値段のように考えてしまっている人ほど、年収に対してかたくなな姿勢になる傾向があります。しかし実際には、年収は、役割と成果に対しての対価に過ぎません。
転職したばかりでは、その役割と成果がまだはっきり見えない。雇う側からすれば、どれだけ活躍してくれるのか読み切れない。だから、固定費として最初から最大限の金額を設定することは難しいケースがあるのはやむを得ないことだと思います。
迎え入れる側からすると、前職でいくらもらっていた、という事実は参考指標ではありますが、それ以上のものではありません。それはあくまで前の会社で生み出した成果に対する報酬の話であって、会社が変われば仕事での役割と成果とはまったく別のものになるからです。
ただ、ほとんどの企業の評価制度や報酬制度は、役割を果たし成果をしっかり出せば、それに連動した内容になるはずです。転職面接では、むしろ、入社した時点の収入よりも、この評価制度の詳細を聞き、納得できる内容であるかどうかを確認すべきです。
私が転職をお手伝いした方々の事例でいえば、転職した初年度年収は、前職時代よりも低い水準でスタートしたほうが、その後活躍して、昇格昇給を実現しているケースが圧倒的に多くなっています。
逆に、もともとの企業側オファーよりも高い報酬水準でスタートすると、周囲の視線も厳しくなり、期待にこたえきれずに早期に退職してしまう事例も多くなります。
また、ベンチャー企業であれば、昇進昇格も早く、あっという間に給与が倍になったり、ストックオプションで大きな財産を手にするチャンスを得られることもあります。
入社直後の年収だけでなく、入社後10年の総収入がどう変わる可能性があるのか、もっといえば社風や仕事にフィットするのかどうかといった充足度をより重視していただきたいと思います。
「松竹梅」で本当に必要なお金を考える
そしてもうひとつ、年収にこだわる理由は、本当に必要なお金がいくらなのか、実は自分でよく把握できていない人が多い、ということもあります。だから、お金はあればあったほうがいい、という発想になってしまう。
そこでぜひ、新しい未来に踏み出すうえで挑んでいただきたいワークが、本当に必要なお金はいくらなのか、洗い出してみることです。
それも、「松竹梅」で考えてみる。現在の年収での生活が赤字でなければ、現在の年収を「松」と書き、それより10%低い金額を「竹」、20%低い金額を「梅」とおいて想定してみてください。
必要なお金を具体化させ、松竹梅と3つのコースを想定しておくことで、年収や給与に対する向き合い方はまったく変わっていくと私は思っています。
黒田 真行
ルーセントドアーズ株式会社
代表取締役