オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ある日、生徒の母親から「親子関係の変化」を報告されました。母親側にあった「問題」そしていい親子関係の築き方について同氏が解説します。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
子の学業不振、母は「先生が悪い」と言うが…家庭にあった根本問題 ※画像はイメージです/PIXTA

母親が「宿題をチェックするようにした」ワケ

でもそんな私の心配は、全くの杞憂(きゆう)でした。あなたのおかげで、私は人間がどれほど柔軟な生き物であるかを知ることになります。

 

当初、「誰も助けてくれない」という無力感を抱いていたあなたでしたが、最終的には自分や子どもの問題に向き合おうと決意します。まずは座って若蘭と話し合い、学習面で苦労している点について一緒に改善策を考えました。

 

そして若蘭が落ち込んだ時は、励まし、支えてあげました。あなたが宿題をチェックするようにしたら、若蘭は嫌がるどころか、むしろあなたを頼もしく感じてくれたそうですね。

 

あなたは口にしなかったけれど、きっと本気で自分の不安や恐怖心を受け入れ、我が子を理解しようとしたのでしょう。若蘭が勉強でつまずいた時や、両親の不仲に不安や恐れを抱いた時も、その心を受け止め、新しい生活や、それによる変化に対応できるよう、若蘭に寄り添いました。

 

あなたが困難に立ち向かう姿を見て、若蘭自身も生活面、学業面での問題に向き合うようになりました。そして最も大きな成果は、あなたが子どもに怒りをぶつけず、「この子を助けられるのは自分だけだ」と考えて、子どものために時間と労力を費やし、自分の忙しさに子どもを巻き込まなくなったことです。

 

こうして大切な我が子だけでなく、自信と愛情もあなたの許(もと)に戻ってきました。本当に喜ばしいことですね。

 

とはいえ、まだ全てが終わったわけではありません。今後も苦労することがあるでしょう。でもこれまでの日々が若蘭とあなたの忘れがたい思い出となったように、「自分のことは自分で責任を持つ」という勇気と覚悟さえあれば、どんな険しい道のりもきっと乗り越えられるはずです。

 

昔のあなたのような親御さんは他にもたくさんいて、「親子関係を壊したくないから、子どもに何も言えない」と言いながら、「先生が何とかしてくれるから、今は待つしかない」と心配な気持ちをごまかそうとします。でも、心配しながら待っていても、それは事態を悪化させる「有害」なものでしかありません。

 

こういう親は、宿題や生活態度について注意することも、子どもの意見に反対することも怖くてできません。その役割を全て教師に押し付け、しかも子どもが何か問題を起こした時は、教師のせいにしようとします。

 

この状態が続くと、子どもは自分の間違いを他人のせいにするようになります。でも親は、この悪い習慣を作った原因が自分にあることに気づきません。