オードリー・タンの母、李雅卿氏が創設した学校「種子学苑」。子どもたちは、何を学び、いつ休むかを自分で決める自主学習を行います。ある日、生徒が学校生活に対する不平不満を同氏に打ち明けました。 ※本連載は書籍『子どもを伸ばす接し方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・編集したものです。種子学苑に集う子どもや親、先生から寄せられた質問に、同氏が一つ一つ答えていきます。
「学校をやめて、家で勉強したらダメ?」オードリー・タン母の答え ※画像はイメージです/PIXTA

学校は「いつでもやめていい場所」?

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学校が重要なことは分かっていますが、学校をやめて、家で勉強するという選択肢はないのでしょうか?

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あなたと一緒に海辺を散歩しながら、学校生活に対する不平不満を聞いていたら、頭上から巨大な網が降ってきて、あなたを捕らえようとする様子が頭に浮かびました。あなたには、こうした深刻な話を打ち明けられる先生や友達もいないのですね。海も空もどこまでも広がっているのに、あなたは深い深い苦しみの中にいます。

 

私は「走ろう!」と言って駆け出しました。カニたちは突然動いた影と巻き上がった砂にびっくりして、一斉に巣穴へ逃げ込み、煙のように一瞬で消えてしまいました。後ろを振り向くと、驚いたあなたの顔が夕日の幻想的な光に照らされています。私がゆっくりと近づこうとした時、あなたは「天風(著者の長子、オードリー・タンのペンネーム)みたいに、家で勉強しようかな」と言いました。

 

私は「分からないわ」と答えました。「その決断が思いつきなのか、本気なのか、私には分からない」これは私の正直な気持ちでした。

 

私は年を重ねた経験から、「思いつきで決めたことは長続きしない」ことを知っています。だから、今から親切な魔女になって、水晶玉に映る未来をあなたに見せたいと思います。

 

きれいな包み紙を開いて出てきたのは、物事のありのままの姿を映し出す水晶玉です。さあ、「学校」はどんな風に映るでしょう?

 

おや? 見えてきたのは、子どもの頭の中にある学校を映したもののようですよ。

 

●勉強する場所や教材が簡単に手に入る場所

●一緒に遊ぶ人がたくさんいる場所

●いつでもやめていい場所

 

あなたは小さく「違う」とつぶやき、「学校はいつでもやめていい場所じゃありません!」と言いました。でもね、これは本当です。嫌がるあなたを無理やり学校に通わせる方法なんてどこにもありません。義務教育期間中の学校への入学を義務付けた「強制入学条例」の存在や、両親からの期待、将来への不安は、あなたが重要だと思いたいだけで、実際は何の効力もありません。

 

「重要だと思いたいわけじゃありません。思わざるを得ないんです」とあなたは言います。

 

そうでしょうか? ここでは細かな言葉の違いを議論しても仕方ないので、「なぜ重要だと思わざるを得ないのか」を冷静に考えてみましょう。

 

そうすれば、あなたも私の考えを認めてくれるかもしれません。

 

では、少しずつ見ていきましょう。まず、「学校をやめて家で学ぶ」ことを選んだら、どんな生活が待っているでしょう?