SDGsで「ゴミ問題」に終止符が打てる可能性!?
このところ巷で話題となっている「SDGs(持続的な開発目標)」というキーワードがあります。共同住宅の管理組合や管理会社もそれに則り、環境に優しいゴミ問題の解決策を模索しはじめています。
●共同コンポストで生ごみを1/10に
ゴミの排出を減らす方法の一つに「コンポスト(生ゴミの堆肥化)」があります。
本来は生ゴミとして捨てていた野菜くずや食べ残しをコンポスターで乾燥・発酵させて、できあがった堆肥をガーデニング等に再利用するというものです。
これを共同住宅一体となって行い、各住戸から出るゴミを少なくするというアイディアを実践したマンション管理組合があります。そのマンションは典型的な郊外型で、駐車場のほかに敷地も広大です。
管理組合は、敷地の一角にワンルームマンション一室大のコンポスターを設置し、日中の決められた時間帯に各住民が生ゴミを投入していくというルールを決めました。コンポスターに投入された生ゴミの総量は1ヵ月平均で約900kg、そこから得られた堆肥は約90kgで、コンポスト作業を続けることでマンション内の生ゴミを1/10まで圧縮できることがわかりました。
しかし、これを継続するにも障壁があります。コンポスター内の清掃や堆肥の取り出しといった日々の管理作業は数人の住民ボランティアが交代で行っていますが、時期によっては作業中の発酵臭や腐敗臭がきつくなり、真夏の密室作業も過酷極まりないのです。そのため、ボランティアの定着が難しいというのが目下の悩みとなっています。
●天然ハーブや益虫の力を最大活用
前述の通り、築年の古い共同住宅であるほど、建物の隙間から害虫が侵入してくるリスクは高いといえます。加えて敷地内に豊かな緑があると、植栽の奥深くが害虫の発生源になってしまう可能性もあります。昭和築の大規模マンションには、それらの悪条件が揃っているところが多くみられます。
しかし、建物は古くても、交通・商業利便性が高く暮らしやすいマンションはたくさんあります。そんな好立地に建つ、ある築古マンションの管理会社も新しい試みをはじめました。
そのマンションは最寄り駅から徒歩3分の都心一等地にあります。大家一族が代々自邸を構えていた跡地で、敷地内には邸宅時代の坪庭や花壇が残されており、建物1階部分には駐車場とゴミ集積場が配されています。
エントランス横にある広さ1坪程の花壇には、防虫対策として「アロマティカス」や「カレンソウ」「ニーム」といったハーブがふんだんに植えてあります。管理会社の若いスタッフによると、カレンソウは蚊除けのために開発された植物で、ニームはインド原産のどんな害虫も寄せ付けないハーブ、そしてアロマティカスはゴキブリが嫌う植物としていまブームになっているといいます。
また、ゴミ集積場入口には張り紙があり、そこには「アシダカグモ飼育中」と書いてあります。虫嫌いの住民が見たら卒倒しそうですが、このアシダカグモはゴキブリを捕食する、ゴキブリ最大の天敵だというのです。身体は10~15cmと大きく、見た目は毛がないタランチュラのようで不気味なのですが、性格はおとなしく臆病で、ほかのクモのように糸を張って巣を作らず、常に動き回り、人の気配がしたら物陰に隠れてしまいます。
もしゴミ捨てのときに出会えたらむしろ「ラッキー」と思っていいかもしれません。このように、殺虫剤や化学薬品を使わず、自然の植物によって害虫予防ができるのは理想的なことです。虫嫌いの住民がどこまでクモの存在を許容できるかが気にはなりますが、いまのところクレームの声は上がっていないそうです。
ひとりひとりの努力が「家庭ゴミ減少」を実現する
家庭から出る生ゴミの4~5割は食べ残しや、冷蔵庫の奥にしまい忘れたまま消費期限が過ぎてしまった手つかずの食材だといわれます。先日の東京オリンピックでも約4,000食分の弁当が廃棄されたことが取り沙汰されたばかりです。
管理組合や管理会社の積極的な取り組みも大切ですが、住民ひとりひとりがこういった食品ロスをなくす努力をすれば、コンポストなどに頼らなくても、かなりの家庭ゴミを減らすことができ、それが悪臭や害虫の減少へとつながっていくのかもしれません。