(写真はイメージです/PIXTA)

経営者にとって、従業員の指導は非常に難しいものです。従業員のためを思って厳しく指導しても、「パワハラだ」といわれてしまうことがあるのではないでしょうか。本記事では、弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の代表弁護士の西川暢春氏がパワハラの基本的な考え方と判断基準について、事例を交えて解説します。

「パワハラにあたらない」と判断された事例

最後に、「パワハラにあたらない」と判断された事例について見ていきたいとおもいます。

 

Case.1 業務上必要な指導

東京地方裁判所 平成28年10月7日 90分にわたって「退職を考えるのか」や「仕事ができるようになるのか」などを繰り返し質問した事例

 

十分な指導を受けたにもかかわらず、基本的なミスを繰り返す新人看護師に対して、90分以上の叱責を行い、そのなかで、「いつまでにミスをせず仕事をできるようになるのか」「できないのならば、納得して辞めることを考えるのか」について繰り返し質問したが、パワハラにはあたらないと判断されました。

 

この事例では、医療機関においては正確性・安全性は軽視されるものではなく、長時間にわたる叱責も業務上必要な指導として、パワハラにあたらないと判断されています。

 

このように、人命や重大な損害が予測される現場では、比較的強い指導もパワハラにはあたらないと判断される傾向があります。

 

Case.2 就業規則に基づく指示

前橋地方裁判所 平成29年10月4日判決 就業規則に基づいて、部下に対して朝6時に出社するよう提案した事例

 

部下に対して「夜早く帰りたいのだったら、朝6時から仕事をはじめるのはどうか、自分も6時に来るから」などと発言したが、パワハラにはあたらないと判断されました。

 

これは、フレックスタイム制が適用され、かつ、就業規則上、業務上必要であれば時間外労働を命じることができるとされていたことから、就業規則に基づく指示であったとして、そういった発言をすること自体はパワハラにあたらないと判断されました。

 

このように、就業規則に根拠がある場合は、比較的厳しい要求であってもパワハラにはあたらないと判断される傾向があります。

 

Case.3 口論になっている場合

東京地方裁判所判決 平成28年10月7日 先輩からの指導に対して反論した新人に、「人間的に無理」と発言した事例

 

本来看護師がするべきでない行為を行った新人看護師に対して、先輩看護師が注意したところ反論したため口論になり、先輩看護師が「人間的に無理」と発言したが、パワハラにあたらないと判断されました。

 

これは、新人看護師の方が指導を受けているのに、反論して口論になったという経緯から、一方的に人格否定の発言をしたわけではないとして、パワハラにはあたらないと判断されました。

 

このように、一般的にはパワハラにあたる人格攻撃の発言も、その発言に至った経緯や、口論になっているなどの事情から、パワハラにはあたらない場合もあります。

 

■動画でわかる「パワハラ」の判断基準

 

 

 

西川 暢春

弁護士法人 咲くやこの花法律事務所

代表弁護士

 

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