脱サラして一念発起、突如「異国の地ルワンダ」でASIAN KITCHEN(アジアンキッチン)を開業した、シングルマザーの唐渡千紗氏。今夏、重版された書籍『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社)では、同氏が経験した「珍事の連続」が赤裸々に語られています。予測不可能なことばかりするスタッフたちを前に、「日本を忘れる修行」を決意することに……。
経理担当が「お金を無邪気に着服」ルワンダで怒涛のレストラン経営 ルワンダの首都・キガリの風景(※画像はイメージです/PIXTA)

「装飾用の小瓶が見当たらない…」衝撃の理由

さて、アレックスが客席で寛いでいるのを発見した日から程なくして、とある締め作業の夜。装飾用の小瓶が一つ見当たらない。アレックスに聞くと、「あぁ、あれ、1つ4000フラン(500円ほど)で売りました! ディナータイムに来たお客さんに」と、意気揚々と答えるではないか。

 

……え? 売った? 装飾品を売り飛ばした……だと!?

 

インテリアに詳しい知り合いが、わざわざ日本からスーツケースで持ってきてくれた、こじゃれた小瓶だ。もちろんここでは、同じようなものは見つからない。

 

「はい。お客さんから欲しいって言われたんで。値付け、いい線いってます?」なんてアレックスは得意顔で聞いてくる。

 

出た……なんだってこう、予測不可能なことばかりしてくるのだ。日本だったら絶対にそんなことは起きない……が、いやいや、待て待て。日本のことは一旦忘れよう。日本の常識も、コンビニ店員の神対応も、一旦全て忘れ去るのだ。ここは日本ではないのだ。

 

それにしても、自分に染みついた常識を忘れることが、これほどまでに難しいとは。これは一体何の修行なのだろうか。装飾品は勝手に売らないで……って、言ってなかったっけか……ハハハ……。道のりは、まだまだ遠い。

 

 

唐渡 千紗

ASIAN KITCHEN オーナー