脱サラして一念発起、突如「異国の地ルワンダ」でASIAN KITCHEN(アジアンキッチン)を開業した、シングルマザーの唐渡千紗氏。今夏、重版された書籍『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社)では、同氏が経験した「珍事の連続」が赤裸々に語られています。予測不可能なことばかりするスタッフたちを前に、「日本を忘れる修行」を決意することに……。
経理担当が「お金を無邪気に着服」ルワンダで怒涛のレストラン経営 ルワンダの首都・キガリの風景(※画像はイメージです/PIXTA)

「この前預けたお金、今日精算しよう」まさかの回答

「エブリン、この前預けたお金、今日精算しよう。いくら残ってる?」

 

「残ってないです」

 

「え? 全部使ったの? だいぶ余ると思ったんだけど」

 

「はい、一旦は、半分くらい余りました」

 

「だよね。それどこ?」

 

「使っちゃった。プロブレムですか?」

 

「……え? 使っちゃった? 何に? え? 自分のものにぃ⁉」

 

なんと、経理担当が、全く無邪気に会社のお金を着服しているではないか!

 

「いや……会社のお金だからさ。勝手に使っちゃダメだよ。えーっと。なんて言ったらいいんだろう。えっと」

 

私も混乱して、何をどう言えばいいのかわからなくなってきた。そんな私にエブリンは「ウップス」と舌でもぺろりと出さんばかりにつぶやいただけだった。

 

もちろんエブリンには返金を要求したけれど、「無理です。ないものは返せないからねぇ」と悪びれもせず答える。そうなのだ。返せと言ったところで、ないものは返せない。こんなことは、エブリンだけではない。

 

結局、内装工事で多くの人に騙し取られたお金※5も、証拠を突きつけて返金を求めたところで、ないものは返せない。相手が悪いことを、お天道様のもと証明できたとして、だからといって一円も戻ってこないのだ。貯蓄もない、その日暮らしの人たちだ。ない袖は振れないとはまさにこのことだ。

 

※5 工事がなかなか進まなかったり、頼んだものと別物を作られたりして、ぼったくられた総額はかなりのものになっていた。