脱サラして一念発起、突如「異国の地ルワンダ」でASIAN KITCHEN(アジアンキッチン)を開業した、シングルマザーの唐渡千紗氏。今夏、重版された書籍『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社)では、同氏が経験した「珍事の連続」が赤裸々に語られています。「完全に廃墟」だったテナントをリニューアル、ひっそりとオープンしたのも束の間……!?
脱サラのシングルマザー、「ルワンダにタイ料理屋を開業」も…お客様第一号に驚愕のワケ ※画像はイメージです/PIXTA

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お客さんに来て欲しいような、来て欲しくないような…ルワンダに店をオープン

アジアンキッチンは、ルワンダの首都キガリにオープンした。といっても、日本のように「祝・開店」と書かれた札の刺さった花が贈られるようなこともなく、ひっそりとしたものだった。

 

接客トレーニングはいくら重ねてもコントさながらだし、料理も少し目を離すと、とんでもないものができ上がってしまう。あと何週間訓練すればこのレベルまでいける、という確信が全く持てない。予想不可能なことに時間を割くよりは、未熟なままでもひとまず市場に晒しながら、磨いていく方がいいだろう。というか、そうするしかない。このまま永遠に身内でコントを繰り広げていても、どうしようもないのだ。

 

ただし、まだまだ未熟なこの状態で、お客さんが高い期待値で来た場合、ガッカリして二度と戻って来ないかもしれない。ただでさえ小さな市場で、そんなことになれば開店して間も無く閉店してしまう。だから宣伝するのはまだ待とう。というわけで、実際は、お客さんに来て欲しいような、来て欲しくないような、微妙な心境だった。こんな飲食店オーナー、他にいないだろう。極力気づかれずにオープンしようだなんて、我ながら意味不明だ。

 

でも開けると決めた以上、ビクビクしてはいられない。おそらく確実に問題は起こるだろう。その時は、その場で私がトラブルシューティングをするしかない。オープンからクローズまで店に張り付いてやりますぜ! 見切り発車でもなんでも、発車しないと始まらないのだ。自転車に乗れるようになったら乗ろう、では、いつまで経っても乗れないままだ。こんな風に、自信はないけれど、覚悟だけはあった。

 

会社員時代はとにかく間違えることが怖かった。でもここはルワンダだ。文化も違えば商慣習も違う。何もかもが違う、という前提条件が、私に勇気をくれた。コミュニケーションをとる言語だって違う。英語を話している時の自分は、別人になれる気がした。

 

そもそも、人生をリセットしに来たんじゃないか。安定した会社員を辞めて、息子を巻き込んで日本からルワンダまで来ておいて、同じようにウジウジしていられない。合ってるか間違ってるかなんて、やりながら見つけていくしかない。とにかく今は、やってみるしかないんだ。